序章
鳥たちが声を披露し花々が可憐に咲き誇る。
空は曇り一つ無い晴天、空気は透き通るよに清くよどみもない。
そこは完成された空間。時の輪廻より外れすべての理が集まる世界。
そんな世界の一隅に扉を開く音とドサッとした何かが地面に落ちる音が響き渡った。
テラスの中に置かれた黒い色の椅子に座る男が涼し気な表情でドアの先にいるモノを眺めると
テーブルに手をかける。
「ハク、それは何だ?」
満面の笑を浮かべながら一息つくようにしてパサパサと体についた埃を青年は落とした。
「これか? 拾ってきた」
「いや、そうではなく何のためにここへ連れてきたのだ?」
長く伸びた白色の髪、エメラルドのような美しいグリーン色の瞳
色白で誰が見ても美青年だと口を揃えて言うであろうその美貌の持ち主は
優しげな笑を浮かべスタスタと白色の椅子に腰をかける。
「僕は遠目から見てたんだけどそこにいる人間はとても強い人間なんだ」
「強い?その人間が?」
「もちろん僕たちみたいな存在と比べると道端におちてる小石ぐらいの力しか持ってない
だけど人間にしてはかなり上位の力を持ってると思うよ」
「くだらん、人間は人間だ我々が指一つ動かすだけでこのような存在は消し飛ぶであろう
そんな存在をなぜこの地へ連れてきた?」
「それはもちろん剣技を習うためさ」
「剣技? あぁ、そういえばハクは冒険者になりたいと常々言っていたな
まさか本気だったとは思いもしなかったが」
「本気も本気、超本気さ、僕はこの剣士に剣技を習って冒険者として旅に出るんだ」
「本気か?」
「だから本気って言ってるだろう?その間この世界の管理は君に一任するよクロ」
「お前はそうやってまた私を置いてい行くのか?」
「また? 僕の記憶によると僕はずっとこの場所にいた気がするけど」
どこか悲しい面持ちで頭を左右に振りながら拒絶するように
「いや、私の記憶違いだ気にするな」
「なんか意味深なんですけど~まぁーいいや、今から彼を蘇生して早速契約。
その後は剣術の稽古だ。楽しみだな~! 絶対才能あると思うんだよね~僕。
クロはどう思う?」
呆れた様子でクロはため息を漏らした。
「まぁー才能はあるだろうな。なにせお前はハクだからな」
「そうさ僕はハク、僕の成長率は誰よりも高いんだ」
「せいぜい頑張るがいい。私はただ見守るだけだ」
「クロはいつもクールだねそんなクロが僕は好きさ。んじゃーぱぱっと
彼を生き返そうか」
そう言ってハクは椅子から立ち上がり倒れ伏している男を眺める。
「さて蘇生だが前々から試してみたかった事があるんだ。君にはそれを試そうと思う。
成功すれば少ない魔力で完全治癒が可能となる。まぁー失敗しても僕がちゃんと生き返してあげる
から心配ないよ~」
満面の笑を浮かべながらハクは手のひらを宙へかざした。
すると一瞬にして空中に魔法陣が展開される。
魔法陣は白色の稲妻を放出しながら脈打つように何度も輝きそして次の瞬間
「治癒魔獣ベアロロス想像召喚」
魔法陣から放たれた白色の電撃が地面に向かって爆散するとその場所に可愛らしい柴犬が現れる。
見た目は可愛らしい犬だが、中身の性能はあらゆる面で秀でている。
中でも蘇生スキル回復スキルに関しては光の精霊たちと競えるほどだ。
「じゃーペアちゃんその人間たべちゃって」
「おい、いいのか?」
「問題なっしんぐ、ベアちゃんのちからをとくと見よ」
そう言ってハクは楽しそうに犬と人間の姿を眺め始める。
ベアちゃんもハクの期待に答えようとスタスタと小さな足を男前まで進めた。
数秒男を眺め、ぺろりと舌舐めずりをすると次の瞬間大きく口が開かれる。
その開かれた口は通常時の5倍以上まで膨れ上がり一瞬にして男を丸呑みにしてしまう。
そして数秒後すぐに飲み込んだ男を吐き出した。
「う……」
先程まで死んでいた男が犬から吐き出された途端に息を吹き返した。
遠目からも見えていた腕や足の傷まですっかり治癒している。
実験は成功ということだ。
ハクは満足そうに頷きながらベアちゃん呼び寄せ頭をなでてやる。
「自立型支援魔獣ベアちゃんは成功みたいだ。それじゃー次は…」
それから目覚めた男に今の状況とこれからのことについて話し合いが始まる。
数分後、互いに条件を定時した後二つのことが定められた。
一つ、命を救ってもらった代償に剣術を教える事。一つ
剣術の教えがある程度のレベルまで達したら元の世界に戻すこと。
それら二つの決め事をして2人は合意にいたった。
「よし! それじゃーさっそく始めようか!」
「それは良いが、互いに名前を知らぬは不便であろう」
「そうだね。それじゃー僕から自己紹介するね? 僕は名はハク
そしてあっちのがクロ、これから仲良くしようね」
「ハク殿とクロ殿、私の名は……」
……………
……
時は過ぎ去り5年もの月日が流れていた。だが男もハクも歳を一切とっていない。
この世界は時間の流れが存在しない。住むものにもそれは適応され時間が止まってしまうのだ。
故に男を5年もの間この場所にとどめて置けたわけなのだが、ようやくハクの剣術がある一定の
域まで至った。それにより契約は成就し別れの時が訪れる。
「うぅ……師匠~5年間ありがとう~君のことは決して忘れないよ」
「俺もハクとクロのことは忘れない。本当にありがとう。そして楽しかった。
又何処かで会おう友よ」
そう言って白い大きな渦の中へと消えていった。
「よぉぉーし! 時は満ちたり! 僕もこれから冒険の旅を始めるぞ!」
「そう言うと思って準備はしておいたぞ」
「え?」
「これを受け取れ」
クロは何処からか白と黒の鞘に収まった刀と5つの指輪をハクに手渡した。
「これは?」
「その刀は俺からの餞別だ」
「カケェェ! これ本当にくれんの?」
「あぁ、持っていけ、あとその指輪だが我々のチカラを1段階ずつ封印する魔具となっている。
人間界にいくならそれぐらいしないと周囲の者に影響を及ぼすだろう一応つけておけ。
魔力の放出を抑え封印する術式が組み込まれている。俺が直々に組み込んでやったんだ
安心して冒険者とやらを謳歌してこい。ちなみに治癒系の力はすべて扱えるようにしておいた。
蘇生やお前の好きなあの犬だって出すことができるぞ」
「さすがクロちゃん、手が起用!」
「そこなのか?」
「まぁーいろいろあったけどいよいよ出発だ」
「最後に言っておくが5つの封印が破られたらすぐにこの世界に戻ってこいよ?
でないと大変なことになるぞ?」
「わかってるってそれじゃー行ってくる」
「ところでどうやって人間界に行くつもりなんだ?」
「転移とかゲートとか色々考えたけどやっぱ精霊街道を使って渡ろうと思う」
「精霊街道か……確かにそれなら確実に人間界へ行くことができるな
だがどうして転移ではダメなのだ? あちらは一瞬だと思うのだが」
「馬鹿だな~それじゃー冒険にならないじゃないか?旅立ちっていうのは
やっぱり長い道のりを永遠と突き進んでいいく物なんだ。ここらへんはロマンの
問題。まぁーロマン云々はクロにはわからないだろうけどね~」
「俺には到底理解できない行動だな、非効率極まりない」
「えへへ、まぁーとにかく僕は行くよ新たな旅立ちの世界へ」
「そうか」
「うん、んじゃ~いってくる」
「あぁ」
そう言ってハクもまた白い渦に入りその姿を消した。
ハクが去った世界でクロは小さくため息をついた。
「また俺は一人か……まぁーいい一瞬だ、一瞬の出来事だ。
世界がどれだけ流れようと、どれだけ消えゆこうと、この世界は変わらない。
俺はただ、それを待ち続ければいい、そう、待ち続ければ……」
更新はゆっくりと~




