091(ディジスプ)
俺はコーヒーをすする。酸化して味が落ちたかな?
コンコン。ドアをノックする音だ。
「入りたまえ」
ガチャッと応接室のドアが開き、1人の私服警官が入ってきた。40代でスーツ姿にスニーカー。1課か3課だな?
「失礼します。十条警部補」
「やあ、桂小次郎警部補。圭市君、佳子さん捜索はこの桂警部補に引き継がれるよ」
「えっ!? 十条警部補は退職ですか?」
「いや、定年まで頑張るよ。但し体力面で衰えてきた。だから、若い桂警部補に引き継ぎをしようと思ってね」
「そうですか」
担当者が代わるだけか。この人も有能だといいな。十条警部補はウェアラブル端末を見ている。
「宜しくね、松本君」
「宜しくお願いします」
「じゃあ、私はこれで。あとは桂警部補と圭市君で話し合ってくれ。基本的なことは引き継ぎ済みだが、詰めの意見交換をしてほしい」
「分かりました」
十条警部補は応接室から出ていった。急用かな? 代わりに桂警部補が座る。
「松本君、早速だが“DGSP”というワードを知ってるかい?」
「ディージーエスピー? 聞いたこともありません。何ですかそれ」
「通称“ディジスプ”という危険な団体。噂では人類縮小を狙ってるそうだ」
「他人を操る能力はその団体が関わってるんですか?」
「可能性はなきにしもあらずだな。とにかく、ディジスプと名乗る者には気を付けることだ」
ディジスプ…………母さんの失踪にも関与してるのか?
「母は関係してますか?」
「かもしれない」
「その団体はどこにありますか?」
「乗り込むつもりかい? 判ってたら、とっくに事件は解決してるよ」
「ネット社会です。シティで情報収集すれば」
「無意味だよ。自分で検索してみるといい」
どういう意味だ? 桂警部補は1枚のカードを取り出し、俺の目の前に置く。
「名刺ですか」
「俺の連絡先はそのアドレスからね」
「分かりました」
「今日はそろそろ帰りなさい」
「はい。ありがとうございました」
「松本君のお母さんは必ず見付けてやる」
「そう言われて15年経ちます。1つお願いが」
俺は明暗寺に帰る前に留置場に案内されて行く。遠藤のバカと面会だ。




