089(犯人は俺)
マインド・ポゼッションを知らない者からしたら、雲を掴むような事だな。
「会長、警察でも解決出来ない事件ですよ? 駆け出しの探偵にどうこう出来る話ではありません。しかし、可能な限り頑張ります」
「ああ、宜しく頼むよ」
俺はペントハウスを後にしてGTRで飯松警察署へ向かう。
警察署の駐車場に慎重に停めて、降りる。鍵を掛けて屋内に行く。
そして、姉ちゃん事務員に話し掛ける。
「松本圭市だ。十条警部補を頼む」
「こんにちは、松本様。すぐに呼びますね」
俺は待合室に居ると、数分で十条警部補が来た。相変わらず、ちょび髭で恰幅が良い。
「圭市君、お待たせ〜」
「お久しぶりです」
「応接室で話そう」
「分かりました」
俺は十条警部補に連れられて、1階奥の応接室に入る。
「圭市君、コーヒーは?」
「頂きます」
俺は下座に座る。十条警部補はコーヒーサーバーの調子が悪いのか、チョップで4〜5発叩いてる。
「5年も使ってると、ガタが来るね。はい、お待ち」
目の前に紙コップに入ったコーヒーが置かれる。テーブルの上にはミルクやガムシロップがある。
十条警部補はコーヒーをすすりながら椅子に座った。
「圭市君、良いジャケットを着てるね」
「ラスベガスで買ってきました」
「バッグも買ったかい?」
「ええ、まあ」
「辞めちゃってるのに悪いけど、純一郎は元気かい」
十条純一郎は十条警部補の甥っ子で飯松ウィステリアに大卒で入社してきた、仲良しグループの一員だ。
「ラスベガスではっちゃけてましたよ」
「私にお土産ないのかな〜?」
「あっ、すみません。俺も忘れてました」
「まあ、また今度ゆっくり土産話を聞かせてくれ。……本題に入ろう、遠藤力の件だ」
「本当に他人を操る能力者は居ると思います」
俺はシラを切る。迂闊なことは言えない。
「その能力者は圭市君じゃないよね?」
ドキッとした。どう誤魔化せば……。
「まさか〜、アハハ。それで遠藤のバカは?」
「留置場だよ。会う?」
「やめておきます」
「夢遊病か鑑定しないといけない」
「夢遊病説が否定されたら、いよいよ、マインドコントロールですね」
俺と同じ能力者はおそらく複数犯で、ドムと遠藤のバカを同時に操ったのだろう。




