086(誕生!マインド・ポゼッション)
俺は高速道路のETCを通り過ぎた時に幽体を抜く。上空からタクシーを見ていたら、路肩に停まった。様子を見に行く。
「お客さ〜ん、記憶がないってどういう事ですか? 酔ってたようには見えませんけどね〜」
「俺を誘拐してどうするつもりだ!? カネだな?」
「そうですよ。おカネですよ。代金を払ってくれないなら、警察を呼びますよ」
「俺は社長だぞ! 出るところに出てやろうじゃん。シンジケート」
「はぁ〜。なんだ、コイツ。警察を呼びますね」
俺は国道の上空を飛んで明暗寺に帰る。遠藤に天罰を与えてやった。アハハ、笑いが止まらん。自分の体に幽体を合わせて起きる。コツは掴んだ。あとは普通に眠れるかだ。またベッドに横たわる。
――次の日の朝、俺は目が覚めて、ぐぅ〜っと伸びをする。ぐっすり眠れた。昨日の事は夢かな? 時計を見ると、9時頃だ。
ピピピ。ウェアラブル端末に通話が来た。弥生さんからだ。ピッ。
『圭市君、どういう意味? 本当に遠藤を操ったの?』
「弥生さん、おはよう。どうやら、能力に目覚めちゃったみたい。明暗寺に来て。詳しく話すよ」
『分かった、今から行くね』
ピッ。
俺はリビングへ行くと、伯母さんが居た。
「圭市君、おはよう。今夜はご馳走を用意するわ」
「ありがと」
能力に目覚めたからじゃないよな。探偵事務所を立ち上げたからだよな。俺はテーブルに置かれていた。袋から食パンを1枚出して食べる。
「バターやジャムもあるわよ」
「何も塗らないのが、俺の流儀だよ」
「圭市君ってそこだけ頑なよね」
「ちょっと行ってくる」
「初仕事?」
「打ち合わせだよ」
俺は本堂の下駄箱からプーマのトゲトゲスニーカーを出して履き、駐車場へ行く。
丁度、弥生さんが歩いてきた。
「圭市君、一体どうなってるの?」
「紫色の石は割っちゃダメだよ。毒ガスだから」
「やっぱり、圭市君だったのね。……よう子を殺ったの?」
「解らない。他人を操れるようにはなったけど、ドムを殺った記憶はない」
「そう。いつでも出来るの? その能力」
「眠ってる間だけだよ」
「能力と言っても味気ないわね」
「マインド・ポゼッション……なんてどう?」




