080(クビ)
次の日の朝、俺は時差ボケで一睡も出来ずにいた。ずっとウォーライフをプレーしてたが、ハイリミットのテーブルは4〜5個。人気は完全に下火だ。バーチャル案内アニマルのスィフルに土産話をたんと聞かせた。
伯父さん、伯母さん、和事兄ちゃんにお土産を渡した。お堅いお寺さんを砕くような、浮かれたお土産だ。一応、皆は喜んでくれた。
俺はGTRで出社する。
ロッカールームでユニホームに着替えて、安全靴を履く。
とりあえず、事務室に行く。今井工場長が居た。
「おはようございます」
「松本君、おはよう。早速だが、応接室に来て」
「分かりました」
俺は今井工場長に連れられて応接室に入ると、遠藤のバカが偉そうにふんぞり返っていた。
「お前、首な」
「解雇理由は? ただ嫌いってだけか、坊」
「お前は会社に必要ない」
「まあまあ、力君。松本君は会社に貢献してくれたのだし」
「退職金やるから、飯松ウィステリア工業から出ていけ」
「分かったよ。辞めてやるよ、こんな会社。セクハラ野郎が社長じゃ潰れるわ」
俺は応接室から出る。今井工場長が追いかけてきた。
「今一度、考え直してくれないかな」
「いいんです。お世話になりました」
俺はロッカーから私物をディーゼルのバッグに入れて、着替えて、多軸NC旋盤ラインへ行く。
津野さん1人が居た。
「おはようございます」
「松本さん、おはようございます」
15歳以上も年上なのに、この低姿勢。やっぱ、凄い人だ。
「首になったんで、あとは任せますね」
「ええー!? 辞めちゃうんです?」
「下平と渡辺さんに宜しくとお伝え下さい」
「分かりました。覚悟は出来てますね」
「はい。では」
俺は駐車場へ行き、GTRに乗り込む。もうここに用はないな。清々しい気分で退社できた。100万ドルと2000万円がある。何も怖くない。
――俺は明暗寺へ帰り、GTRを駐車場に停めて降りる。
「圭市、忘れ物か?」
和事兄ちゃんだ。
「遠藤力直々に解雇されたから。和事兄ちゃん、ありがとね」




