052(テイクオフ)
弥生さんはカーボンの塊が空を飛ぶことが信じられないようだ。
ゴゴゴゴゴゴ――。ヒュイーン。旅客機は加速して、フワッと飛び立つ。無事にテイクオフだ。
弥生さんは十字を切る。キリシタンでもなかろうに。
「弥生さん、十字を切る時は墜落する時だ」
「不吉なことを言わないでよ〜」
ピコン。
『当機は問題なく、巡航に入りました。シートベルトをお外し下さい』
俺はシートベルトを外し、立ち上がる。
「圭市君、トイレ?」
「いや、ウォーライフやる。弥生さんもどう?」
「負けるだけで、つまらない」
「じゃあ、ちょっくら俺1人でやってくるよ」
俺はキャビンアテンダントに声を掛ける。
「CAさん、シティはどこからログイン出来るの?」
「ご案内します」
俺はキャビンアテンダントに着いていく。機体の中央辺りの個室に簡易更衣室、各サイズの専用スーツ、ヘッドマウントディスプレイ、椅子があった。
俺はセットしてログインする。
『ようこそ、松本圭市様。今日は飛行機の中からですね』
「よう、スィフル。1万ドル持ってきた、これがギャンブルで100万ドルに化ける確率は?」
『高く見積もって2パーセントです』
「そうか……。ウォーライフだ、ウォーライフをやる」
『かしこまりました。エリアに移動します』
「ハイリミットのテーブルはいくつある?」
『5つです。ペック氏もログインしております』
「ペックさんと同じテーブルにエントリーして」
『かしこまりました。人数が集まるまで少々お待ちを』
ステージは広い倉庫内だ。コンテナやドラム缶など遮蔽物が点在する。
『やあ、圭市』
「ペックさん、こんばんは。今、飛行機の中です。ラスベガスへ向かってます」
『ついに来るのか。ホテルはどこに泊まるんだ?』
「ルクソールですよ」
『それなら、自宅から近いな。着いたら、また連絡をくれ』
「分かりました」
『ウォーライフはそろそろ改変されるから、思う存分やるといい』
「えっ!? 嘘でしょ?」
『3、2、1、スタート』




