004(レギュラースポット)
カーシミュレーションが始まる。ステージは飯松市近辺のドリフトスポット、南木曽峠だ。初心者には丁度いいだろう。
南木曽峠は5つのコーナーで成り立つ。右コーナー、左から始まるS字、左コーナー、右コーナー、そこから長いストレートがあり、直ドリができる。
専用スーツから五感を通して、アクセル、ブレーキ、クラッチ、シフトノブ、サイドブレーキが手足に触れるように感じる。視界には宵闇に映し出される、スピードメーター、タコメーター、3連メーター。
俺の他にプレーヤーは居ない。思いっきり、ドリフトを楽しめる!
上りの直線でサイドブレーキを下げて、アクセルを吹かし、ガツンとクラッチを繋げる。バーチャルのGTRを猛スピードで加速させる。
まずはコーナー手前でステアリングを右に切り、クラッチを切り、アクセルを吹かし、クラッチを一気に繋げ、リアタイヤがブレークしたところで、カウンターを当てる――ガシャン!
左側のガードレールにぶつけちゃった…………リアルでやったら、板金10万コースだな、アハハ。
『松本圭市様、リスタートしますか』
「頼む、スィフル」
『課金すれば、オートマチックシミュレーションができますよ』
「ノーセンキュー」
パッと上りの直線に戻る。次は失敗しないぞ!
――俺は何度もぶつけて2時間後くらいには何とか形になってきて、5コーナーを繋げて滑れるようになった。
俺はログアウトして着替える。時刻は17時30分辺り、夕飯を食うか。リビングへ行くと、博子伯母さんが夕食の準備をしていた。
「伯母さん、夕飯は何?」
「今日は圭市君の大好きなニンニクたっぷりのペペロンチーノよ」
「やったぜ、ありがと、伯母さん」
食卓を家族3人と俺で囲む。俺はバクバク食べる。
「圭市君、美味しい?」
「そりゃもう。美味い美味い」
俺は食べ終え、風呂に入る。といっても、湯船には浸からない。シャワーだけ。バスタブはヒノキ風呂だが、めんどくさい。
俺は部屋に戻り、寝る準備をする。
「おやすみ」