003(レギュラーメンバー)
笹隼伯父さんのお経が終わったようだ。
「圭市君、卒業おめでとう」
「ありがとう、伯父さん。今まで育ててくれて」
「何を言ってるんだい。圭市君は自分の力で…………」
笹隼伯父さんは涙ぐんでる。色々な思いがこみ上げて来たのだろう。
「さっさと母さんを探さないとね」
「佳子叔母さん、早く見付かるといいな」
「和事兄ちゃんもありがと。絶対に見付けるよ」
「あれから10年になるか。佳子さんは無事だと信じているよ」
ピピピ。俺の腕時計型ウェアラブル端末にメールが入った。確認すると、良太兄ちゃんからだ。
【よっ、圭市。シティで車の運転免許を取ったんだろ? 前から欲しがってた、スカイラインGTRを積車で明暗寺に送ったから。大切に乗れよ】
俺はドキドキしながら、すぐに返信する。
【マジかよ! 冗談じゃないよね!? ホントにBNR32くれるの?】
すぐに良太兄ちゃんから返信が来た。
【圭市は昔からモータースポーツが好きだったからな。東京じゃ車は必要ないし。元々事故車だし。やるよ】
【ありがとう! 俺好みにイジってサーキットに行くよ】
俺はこの上ない喜びとドキドキ感に浸ってる。ショシマのGTRなんて粋だな。楽しみだぜ!
「圭市、何ニヤニヤしてるんだ?」
「車が届く。良太兄ちゃんがGTRをプレゼントしてくれたよ」
「最初は軽自動車にしとけ。事故を起こしてからじゃ、つまらんぞ」
「いいじゃないか、和事。圭市君なら大丈夫だよ」
俺は部屋に戻り、専用スーツに着替えて、ヘッドマウントディスプレイを被る。
そしてシティにログインする。
『松本圭市様、ようこそ、シティへ』
俺はバーチャル案内アニマルのスィフルにセッティングしてもらう。
「スィフル、カーシミュレーションの箱ものをプレーしたい」
『車種は何にいたしましょう?』
「日産のR32スカイラインGTR。セッティングはアテーサキャンセル、ハイキャスキャンセル、デフを多板クラッチ式に交換、ブーストアップで400馬力くらい、サスペンションのバネレートでアンダーステアにして。あっ、それとリアタイヤのキャンバーをマイナス3度」
『了解しました』
まずは仮想運転でコツを掴んでおこう。