021(止まらないパワハラ)
俺は、渡辺さんからノギスやマイクロメーターの使い方を学ぶ。
次にメッキ工場への出荷や切削で出る金属クズの処理方法を教えてもらう。
ゴロゴロゴロ――雷か? 遠いな。
渡辺さんは窓から外を見てる。俺は着いて行ってみた。
「雨雲だな。圭市、悪いけど、10時の休憩なしね」
「問題発生ですか?」
「プラント近くに落雷したら、機械を非常停止して」
「分かりました」
「念のために昼休憩は機械を停止しとくかな」
そういえば、遠藤の姿が見当たらない。どこに行った、あのバカ。
「遠藤さんが居ませんが、どうしたんですか?」
「遠藤なら検査室だよ。新規品が入るからね」
「そうですか……」
「なんか元気ないね」
「そんなことありませんよ、アハハ」
ピピピ。渡辺さんのウェアラブル端末が鳴った。ピッ。
「もしもし、遠藤、どうかした?」
『検査を代わって』
「何かあった?」
『巡り巡って、いいことが起きるぞ』
「よく解らんが、別にいいよ」
『すぐに来てな』
ピッ。通話が終わった。噂をすればなんとかだ。
ゴロゴロゴロ――。
「じゃあ、そういうわけで検査室に行くから。落雷したら、非常停止ボタンね。すぐに遠藤が来るから」
「あっ、はい。任せて下さい」
渡辺さんは行ってしまった。正直、不安だ。
ピカッ…………。ゴロゴロ! ガッシャーン!
落雷だ! 俺はすぐに片っ端から機械を非常停止させてく。
遠藤が来るまで何をすれば? ……とりあえず、機械のレールに鋼材を並べる。すると、パイプラインから下平が来た。
「まっつぁん、雷が落ちたけど大丈夫?」
「全機、非常停止させたよ」
「パイプラインも非常停止。雷って厄介だね」
俺と下平は少し雑談をする。
「おい! 松本、下平、私語は慎め!」
やっと遠藤が来た。偉そうに。
「じゃあ、パイプラインに戻るね」
「またな」
下平は戻って行った。
「松本、何で機械が停まってる!?」
「落雷ですよ」
「ああ!? そうか!?」
何でキレてんだ、コイツ。
「渡辺さんが落雷したら停止させろって言ってましたよ」
「当たり前だ。それよりさ、駒川弥生ってお前と同期なんだろ?」
「そうですけど、それが何か?」
「俺と弥生ちゃんを付き合えるようにセッティングしてくれよ」




