159(サプライズ)
――それから1週間が経った。俺は体力を半分ほど取り戻して、竜胆を倒す用意を形にして行く。ルームランナーも時速4.6キロメートルで、1時間くらい歩くのが楽勝になった。ナース達は驚異的な回復力だと感嘆していた。
そして、朝、一真アルトさんが面会に来る。
「圭市君、おはよう」
「一真さん、俺はもう大丈夫だ。戦える。外に出してくれ」
「そうするよ、緊急事態だ」
「何かありました?」
「竜胆にミラの位置を特定されてしまったんだ。この1年で数名の能力者が完全開眼した。竜胆に肩入れしてる連中もいる」
「ミラは無事ですか?」
「ああ。しかし、セキュリティポリスが2人殺された。いずれも50口径で頭を1発だ。弾丸の線状痕も一致した」
――俺は一真さんに連れられて、閉鎖病棟から出ようとした時、遠藤がぶつぶつ意味不明な言葉を発して、鍵が掛かったドアに頭をぶつけていた。
「患者さん、退いてくれないかな」
「タバコー! タバコー! 松本、何でお前が退院するんだよ!? ホンモノは一生閉鎖病棟だからな!」
「退け、雑魚」
俺は瞬時にマインド・ポゼッションして、遠藤をドアから退かす。
「一真さん、今の内に」
一真さんは鍵を開けて、俺達は閉鎖病棟から出ると、階段があった。俺はゆっくりと階段を下る。
「圭市君、サプライズがあるよ」
「サプライズ? 何ですか?」
「見てのお楽しみ」
「もったいぶるな〜」
まあ、期待しないでおこう。
5階が閉鎖病棟。4階から下は一般病棟のようだ。エレベーターがあった。俺達はエレベーターに乗る。
「圭市君は行方不明だったのが、いきなり帰ってきた事にするから」
「それなら、明暗寺にも帰れる? ご近所さんの言い訳になるか」
「ああ。記憶喪失だったとでも、適当に説明すればいいだろう」
エレベーターは1階に着く。
「さあ、こっちだ」
一真さんは駐車場に行く。俺は着いていくと、目を疑った。――BNR32、R32スカイラインGTRのブラックパールメタリックが停まっていた。
「一真さん! サプライズってまさかこれ!?」
「君が乗ってた、スカイラインだよ。セッティングは変えず、レストアした」
「最高だぜ!」
俺はGTRのリアフェンダーを撫でる。




