154(類は友を呼ぶ)
一真さんの手下らしき男達が、個室にルームランナーを運び入れた。
「まずは、基礎体力を付けてもらう。使い方は分かる?」
「ええ、まあ」
俺はベルトに裸足で乗り、スイッチを入れる。速さ1キロメートルから始めた。ぐぐっと後ろに持ってかれ、片足を前に出す。なんとか歩ける。
「ほほう、圭市君、結構出来るじゃないか」
「速度1キロメートルですよ。亀の歩行スピードです」
「暫くしたら、筋トレも始めよう」
「分かりました。1つ、一真さんにお願いがあります」
「できる範囲で何でも言ってくれ」
「ウイスキーが飲みたい」
「ダーティだね」
「酒を飲んだ方が幽体を出しやすかったんで」
「分かった、後で届けさせよう。銘柄は何がいい?」
「ジャックダニエルで」
「圭市君、薄めて飲めよ? 今の身体には刺激が強すぎる」
「分かってますよ〜」
俺はルームランナーで歩きながら、答える。
一真さんは退室した。代わりに、おばちゃんナースが入ってきた。
「圭市様、もう運動してるのですね。立派よ〜」
「様子を見に来ただけ?」
「あっ、そうそう。点滴を外しますね」
「やっと邪魔くさい物ともお別れか」
俺はルームランナーを止めて、ベッドで横になる。おばちゃんナースは絆創膏を剥がして針を抜く。手際が良い。針の傷口に絆創膏を貼って終わる。
「はい、これで終了です。食事をちゃんと摂って下さいね。それと、暫くは傷口を押さえてて下さい」
おばちゃんナースは、点滴ラックのキャスターを転がしながら退室した。
俺はポテチの海苔塩を摘まむ。…………塩だ! 塩だ〜! 美味い、しょっぱい。あっという間に一袋が空になる。
何気なく、左鎖骨の辺りが疼く。鏡で見てみると、銃創があった。内臓に当たってなくて良かった。竜胆め! 伯父さん、伯母さん、和事兄ちゃんの仇だ、ぶっ殺してやる!
――昼食には遂に固形物が登場する。ジャガイモとニンジンだ! クリームシチュー! 肉も入ってた。美味い!
食堂のテーブルで噛み締めてると、遠藤のバカが来た。
「松本〜! タバコ寄越せよ〜!」
「吸わないって言っただろ、クズ!」
「やっぱり、松本だ〜。一真って偽名か? ここが一真病院だから。何も恥ずかしがる事はねえよ」
「クズ、お前は恥ずかしがれ」
「類は友を呼ぶんだぞ〜」
遠藤のバカにしては、難しい言葉を遣うな。




