149(一年間、意識不明)
1年間も眠っていたのか? どおりで声を出す筋力も衰えてる訳だ。
「一真さん、アンタはミラを犠牲しようとした」
「マスドライバーの事かい? 精神エネルギーを消費するとはいえ、死にはしないよ」
「ウィルスは撒かれたのか?」
「まだだよ。ディジスプの王は正気を取り戻したらしい、日本人とブルバル人が生き残るウィルスを開発中だ。どうにか止められないかな」
「おいおい、アンタはどうしたいんだ? 城山でウィルスを射とうとしたじゃないか」
「あれは私がすり替えたダミーだよ」
「一真さんはディジスプに背いてる?」
「まあ、そうなるね。一応、穏健派だよ」
「なぜ、ディジスプは日本人を生かそうとする?」
「日本人は勤勉だ。地球は広いし、働き蟻としてはうってつけなのだろう」
「奴隷か。……弥生さんは? ミラは?」
「安心しなさい。2人は無事だ」
「会わせてくれ」
「表向きには君は死んだ事になってる。竜胆から守るために。竜胆は姿を消した。いつどこからアタックしてくるか、懸念している」
死亡扱いか。口座に9000万円もあったのにな……トホホ。
「俺の資産はどうなった?」
「どさくさに紛れて、私の口座に移したよ。相続税と贈与税で7000万円くらいまで減ったけどね」
「小暮総理大臣は?」
「まだ総理の座に在席してるよ」「良かった」
ナースが数人、病室に入ってきた。バイタルチェックか。
俺は血圧や脈拍などを測られる。特に異常なし。
「一真さん、俺はこれから何をすればいい?」
「暫く休みなさい。リハビリに向けて。それと、君がマインド・ポゼッションと言ってる能力の正式名はミリオン・ダラーズだ」
「ミリオン・ダラーズ……」
俺は幽体を抜こうとしたが、出来なかった。もう使えない?
「能力は院内では使えない。厳密には幽体が出入り出来ないんだ」
「幽体自体、出せない」
「スランプのようだね。ミリオン・ダラーズのリハビリもしないといけないな」
「分かりました」
「明日から始めよう。私はそろそろ帰るよ。仕事が山の様にある。圭市君、暫くは精神病の患者として振る舞ってくれ」
一真さんは退室した。俺は起き上がるのに時間を要した。体が完全に鈍ってる。
ピンポンパンポン。
『夕食が届きました。皆さん、食堂に集まって下さい』




