106(情報共有)
俺はプロトタイプなのか? 日本産まれか、ブルバル産まれかも聞き忘れてしまった。また天気の良い日に偵察するかな。
長野県の辺りに雲がかかってる。
すると、明暗寺の方角から強い光が見えた。俺はそこに向かって急降下する。
明暗寺の墓地でゆうこさんが光を放っていた。
「ゆうこさん、光で導いてくれたの?」
「圭市が迷子にならないように」
俺の名前を知ってる? 確か言ってないような……? まあ、いっか。
「ありがとう、ゆうこさん」
ゆうこさんは振り袖を着てる。白っぽい姿だが、見た目をある程度変えられるんだろうな。
「じゃあね」
ゆうこさんは墓地の奥に消えていった。
俺は明暗寺の部屋に戻ると、弥生さんはテレビを掃除していた。
「圭市君、遅いな〜。大丈夫かな〜」
「あー! あー!」
聞こえないか。俺はイタズラをやめて幽体を自分の肉体に合わせる。すぐに起きて、身体に異常がないか確かめる。
「あっ。圭市君、お帰り」
「ただいま。母さんを見付けたよ」
俺は弥生さんと情報共有する。ディジスプの事、俺が開発された生物兵器だという事、殺人ウィルスの事、実家の裏庭に武器が隠されてる事など、母さんから聞いた事を話した。
「テレビを掃除してくれてありがとね」
「ちゃんと掃除しないと壊れちゃうよ」
「夜になったら武器を回収しよう」
「どんな武器なんだろうね。回収するなら早い方が良くない?」
「俺は監視されてるらしい。明るい目立つ時にはやめるべきだ。家にはクズも居るし」
「掘り返すなら、スコップが要るよね」
「そうだねっ……」
ピピピ。俺のウェアラブル端末に通話だ。相手は誰だろう? 知らない番号だ。
「圭市君、出ないの?」
「知らない番号だからさ」
「依頼かもよ」
「そうだね」
ピッ。
「もしもし、こちら明暗寺探偵事務所」
探偵事務所と名乗るのに抵抗はなくなってきた。マインド・ポゼッションが大きなアドバンテージと自信になってるからだ。
『松本君、俺だ、桂だ』
「何の用ですか?」
桂警部補は殺し屋か!?




