ファンタズマゴリア
2016/03/26
N2287DF
もし、空を飛べたなら
風に乗り、大空を翔ることができたなら
肉体へのものよりもつらいこの苦痛を
知らずに過ごせていたのだろうか
一段、二段と足を進め
封鎖されている扉の錠を解き
嘆き悲しむ空の下
屋上の縁に足を添える
鳥になりたいなんて言わない
そんなの、無理だと知っているから
ただ、ふわりと浮いていたい
体を倒し、宙へ委ねる
生まれてきて
愛されて
学校に行って
することをして
誕生日を祝われて
心から笑って
親が別れて
貧乏になって
皆が皆、手のひらを返したように
私に当たった
私を追い詰めた
そして私は屋上に行き
咎める人すら居ないところで
静かに、空中に身を投げ出した
これまでの事が、何度も、何度も、
私の脳内を駆け巡った
気がついたら、上を向いていた
世界が、全て赤黒かった
身体中が、痛みに悲鳴をあげている
指すらも、動かすことができない
息も、絶え絶えになっている
今の状況を理解できると
口角が上がると同時に
ふ、と、息が漏れた
ああ、これでやっと
この世とさよならできる……
意識が遠退いていく中
再び始まる走馬灯
でも、気がかりだとも感じない
ただ、思い出を繰り返すだけの
ファンタズマゴリア
ファンタズマゴリア、つまり走馬燈。