僕の拠点
後は二体だけど、先ほどの場所には既に居なかった。
どうやら、僕のほうが強いと認識してくれたのだろう。
でも、獲物がなー。
しかしながら、ウサギをし止めた緑のやつは多分だが、他のやつよりレベルが高い気がした。
動きや、こちらを見るときの目が違った。
相方もそれくらいか、2体行動だから動かなかっただけなのか。
「考えても仕方ないか。」
さてと、倒した魔物たちは消えたりする様子もない。
下手したら血のニオイでもっとやばそうなのがお目見えするかもしれない。
ここは早々に立ち去るべきか…。
仕方ないので、こん棒は頂く事にした。
拠点へと帰り着く。
念のため血の付着したこん棒は洗ってある。
手持ちはこん棒と採り貯めている木のみのみ。
いや、数日前のウサギの毛皮もあるか…。
これからは行動範囲を広げるべきだな。
レベルとやらが上がったからか、心に余裕ができた気がする。
飢えをしのぐため木の実を口に含む。
今は蓄えがあるから焦ってはいないが、ずっとこれだけとも行くまい。
常に木の実が手にはいるとも限らない。
肉にありつける可能性もさほど高くない。
こうなったら木や蔓なんかで罠でも作ってみるか。
え?魔物は食べてみないのかだって?
あの緑の奴等は流石に食べたいとは思わないよ。
そこまで化生じゃない。
いつかはそうなるのかもしれないが、なるべくは考えたくない。
物足りなかったので追加で木の実を含む。
しかしながら、野菜も食べたい。
てか、野菜が食べたい。
でも、山菜の知識とかないしなぁ。
どれが食べれるのかも分からない。
いざというときは手当たり次第焼くなり煮るなり…
鍋でもフライパンでもいいから欲しい。
その前に火をどうにかしたい。
でも、森の中で火はまずいよなぁ。
何度目かの考え事はやはりと言うべきか、山火事怖い。
という考えで止まる。
森から出るにも道なき道だ。
獣道のようなのは見かけるのだが、外界(森の外)に繋がっている保証はない。
それどころか深部につながっていて、恐ろしいバケモノにでも遭遇したらと思うと今のレベルでは到底敵わないだろうと諦めてしまっている。
ちなみにだが、僕のレベルは3だった。
どうやって分かったのかというと、頭の中に浮かんだというところだ。
それでスキルの内容も理解できた。
「理解できたからと言ってもどうにもならないけど…。」
そう思わず独り言ももれてしまう。
ああ、独りだ。一人だ。
よくもまあ、精神的に参ってない物だな。
それも、意図的に記憶が改ざんされているからか?
主神や担当のミナコいや、ミナコのほうは知らないことずくしのようだった。
まあ、それが演技だったら大女優にでもなれるな。
とりあえずは主神が行ったのか、それとも元居た世界からこちらに転生したことによって欠落したのか。
考えた所で足りない頭では答えは出ない。
仕方ないので木の実を含む。
塩が欲しい。
無添加で、食塩不使用。
ヘルシーであろう木の実では、育ち盛りのはずの僕には厳しすぎる。
このまま背の低いままなのか…
見た目が変えれる的な事言われたときは身体が反応してしまったが、結局は変えれなかったしなぁ。
朝早くから行動するつもりなので、暗くなればすぐに眠る。
灯りも火も無いからね。
近場でようをたし、眠りについた。
__オヤスミ。ワタシガマモッテアゲルカラ。
木々の間から差し込む朝日に目を覚ます。
この拠点としている場所は不思議な一本の木の下である。
周りの木々とは、少し距離がある。
ぽつんとたってはいるものの、存在感がその分増しているというかなんと言うか…
ここにいると落ち着くし、安心感が湧いてくるのだ。
特に眠るときなんかは誰かが見守っていてくれているような気さえする。
ありえないことだとは思うのだが。
「ありがとう。」
僕は何となくいつもぐっすり寝れるのはこの木のおかげだと。
この不思議な場所のおかげだと思い、感謝の言葉が漏れた。
「イエイエ~、コチラコソ。イツモアイラシイネガオアリガトネ~♪」
え?
いや、まさか…
気配は何も感じないぞ?
でも、久しぶりに言葉を聞いた気がする。
あの緑色の金切り声は別だ。
「だ、誰だ!」
声が聞こえたほうへと問うが、静まり返り、返事は返ってこなかった。
参ったな、ついに幻聴が聞こえ始めたか?
栄養失調か何かかな。
でも、聞こえたんだよなぁ。
自分がまいってるのかも知れないと思い、肩を落としながら湧き水が出ている場所へと向かった。
冷たい湧き水で顔を洗う。
タオルは無いので、自分が着ている服で拭う。
洗濯したいが、そこまでの水量はないし、水をためておくための容器も無い。
服のニオイをかぐ。
うん。そこまで汗のにおいはしない。
代わりに、森林の香りだ。
お風呂の入浴剤に近いな。
不思議なことに。
顔を洗い終えた僕は、拠点に戻る。
気配は感じなかったんだけどなぁ。
それともこの場所が気配を感じにくくさせているのか?
昨日逃げた二体が、僕の蓄えていた木の実を頂いていた。
うーむ。どうしたものか、盗られていることにたいして「この泥棒!」っと叫んだ所で言葉の意味が通じるとは思えない。
それどころか、武器の無い僕は不利に思える。
足の速さで勝っていても、それは逃げることにしか役に立たない。
僕が物陰に隠れていると、ウサギをし止めたほうとは別のヤツ(何でか見分けられる。)がこちらを指差す。
すると、ウサギをし止めたヤツのほうがこちらに近づき、僕が隠れている物陰にこん棒を放り投げた。
どういうことだ?
僕は、近場に投げられたこん棒を拾うと二体の前に姿をさらす。
「ギギ。」
それに対し短く鳴くと、こん棒を構える緑色。
もう片方は、それを心配そうに見ている。
それも、僕の方にも顔を向ける。
なぜか僕にも心配する顔だ。
「ギィッ!」
こん棒を構えたまま、怒るような声で今度は鳴く。
まるで早くしろとでも言わんばかりだな。
まさか、ここにきて一騎打ちか?
仲間のための弔い合戦?
「何が望みか知らないけど、僕は魔物を狩れと言われているんでね。言葉は理解できないかもしれないけど、先に言っておくよ。殺されても怨まないでくれ。」
僕の言葉に頷いたような気がした。
気のせいだろう。
でも、正々堂々と佇む様に僕は生唾を飲み込んだ。
なんであれ僕は簡単に死ぬつもりは無い。
狩らせてもらう!
そして、どちらからともなく距離をつめるため一歩目を踏み出した。