プロローグ・3
思い出してみても、考えてみても、情報を整理してみてもサッパリだ。
諦めるのを認めよう。
まず試しに声を出してみる。
「うるさい。」
よし、声は出た。
そこで五月蠅いと言われたと気付いたヴァルキュリ375番。別名ミナコ。
「わーい。やっと返事してくれたわね。」
おおう、そう返してくるとは思わなかった。
何で嬉しいんだよ。煩わしげに声かけたのに。
「それじゃ、あれれ?変更できない項目が多すぎ。うう、ごめんね。色々と融通してあげようと思ったのに。権限も弱いからあまり大きなことしてあげられないみたい。」
謝られた。それに、変更できないとは見た目や性別、種族の事だろうか。
「どうやら、恩恵も呼ばれた時点で添加済み。これじゃ説明だけしろって言ってるのと同じね。」
眉をハの字にしながら困り気味のミナコ。
主神とやらは既に仕事を終えていたようだ。
担当としては事後説明を個別にするだけのようだ。
「いや、僕としては説明があるだけましだと思う。」
僕がそう言うと、申し訳なさげにしながらミナコは
「そう言ってくれると助かるわ。多分、今までの前任者なんかが色々好き勝手して、他の大陸をダメにしたのが原因かもしれない。」
急に物騒な話が出てきた。
「だめにしたって言い方はアレね。枯渇させた。まあ、砂漠化といいますか。」
おでこに手を添えゆるゆると首を左右に振るミナコ。枯渇かぁ。
「それでも、この制度を見直して何度も様々な大陸でトライしている主神様はいつの間にやら白髪頭になってるし。ご苦労が窺えるわ。」
元は白髪ではなかったのか。主神。
「さて、と。それじゃ遅くなったけど、説明するわね。えーっと、なになに」
ミナコの手元に紙束が現れる。
「魔物を狩る。以上。…え、ちょっと。こんだけ分厚い資料だから気合入れて読もうとしたら表紙の次がこれだけって…。頭痛くなりそう。」
ぱらぱらとめくるが、白紙、白紙。ホントひどいな。
「謝ってばかりね。っと、最後の紙に書かれているのは…。ダーツで行き先をある程度決めれるって。ある程度、ね。試しにそのダーツとやらを見て見ましょうか。」
「うん。」
「それじゃ、ダーツをここに!」
紙束を虚空に投げ捨て、両手を掲げるミナコ。
すると現れるダーツ。
どうやら、色々と選択肢があるようだ。でも、読めない。
「この丸いダーツボードには、北:湖。北東:川。東:沼。南東:湿地。南:海。南西:崖。西:森。北東:草原。で、中心:町。って書かれているわね。」
…。なんだろうか、説明聞く限りだとスタート地点が町は絶望的なんだが。