8 第一号店
そして次の日も、いつもの様にみのるの家へと向かった。
友喜は、”今日も何かがあるはずだ。”
そう思っていた。
「おはよう。」
「およようございますですよお!!」
何も知らない千夏は、元気良く言った。
「ああ。おはよう。」
みのるが答えた。
「実くん。今日も晴れだよ。」
みのるが言う前に、千夏が言ってしまった。
「お前!!」
友喜はつい、千夏をどなろうとしてしまった。
千夏は”え??”と、不安そうな顔をした。
友喜は気を落ち着かせて、
「お前、今日は晴れ時々曇りだぞ。ちゃんとニュースを見なさい。」
と、言った。
千夏は、”なーんだ。”という顔をして、
「いいじゃない。そんな細かいことを、気にする人間だったかしら??」
と、冗談めかして言った。
「いや。全く気にしない人間だ。」
と、友喜も冗談めかして答えた。
「そうか。今日は、晴れ時々曇りなんだ。」
みのるも普通に答えた。
「ああ。実。これ、今日の絵だ。」
友喜は、”今日の絵”の裏には、今回何も書いていなかった。
すると、やはり同時に紙を渡してきた。
友喜は静かにポケットの中に、その紙を入れ、話を続けた。
「うちの学校は、学年は一応上がるけど、留年はするってスタイルだ。
わかってるよな??」
「ああ。わかってる。」
「お前、そろそろ本当に来ないと、学年は一緒でも、一浪決定だぞ。」
「ああ。そうだな。」
「へえ。うちの学校ってそういうシステムだったんだ。」
千夏は感心しながら言った。
「そうだ。」
友喜は続けた。
「留年しちまったら、一緒に卒業できなくなるから、気持ちを落ち着かせたら、一緒に行こうな。」
「わかった。ありがとう。」
みのるは答えた。
「それじゃ今日はこの辺で。」
「そうだね。行って来るね。」
千夏も答えた。
「ああ。行ってらっしゃい。」
そう言って、二人は学校へ向かった。
友喜はいつもの様に、一人になってから手紙を開いた。
そこには、
『すまない。友喜。俺の勘違いだったかもしれない。
だから、昨日までの事は忘れてくれ。』
と、書かれていた。
”なんだ勘違いだったのか。”
と、安心したような、どこか不安の残っている様な顔をした。
それから、何事もなく半年が過ぎ友喜は3年生になった。
先生から、クラスのメンバーが書かれた表を手渡された。
そこには、『近藤千夏』の名前があった。
友喜はまた、千夏と同じクラスになれたのだ。
”よかった。”
と、心で喜び、顔には出さなかった。
新しいクラスでの挨拶も終わり、千夏と二人で下校していた。
「また一緒のクラスだったな。」
友喜は、千夏に言った。
「そうだね。よかった。これでまたずっと一緒にいれるね。」
友喜は、”心臓が破裂しそうになるような事いうなよ……。”と思いながら、
「そうだな。」
と、一言で返した。
「なによー。友喜は嬉しくないのー??」
と、千夏は少し寂しそうな顔をして言った。
「……。」
友喜は沈黙をした。
千夏は、不安そうな顔をした。
「冗談だよ。嬉しいに決まってるだろ。」
と、千夏の顔を覗き込みながら、笑顔で言った。
「もおーーーー!!!!本気で不安になったじゃん!!馬鹿!!アホ!!ドジ!!間抜け!!」
と、ポンポンと、友喜の肩を叩きながら千夏は言った。
「おいおい。言いすぎだ。」
友喜は、千夏をなだめながら言った。
「アタシを騙したバツだあ!!!」
そう言って、千夏は更に友喜を叩いた。
「あはは。ごめんごめん。許してくれ。」
友喜は笑いながら、その後も千夏をなだめた。
そんなある日、友喜は絵を描きながら思っていた。
”今度、路上で絵を売ってみよう。千夏の絵もかなり上手くなって来たし。千夏の絵も一緒に出して大丈夫だろう。”
そして、その事を千夏に告げた。
千夏は、しぶしぶだがその話を受けた。
町の方へ絵を売りに行くのは、土曜になった。
土曜は朝から町へと出かけた。
適当な場所を見つけ、そこに店を構えた。
小さかったが、それでも二人は満足だった。
絵を並べ終わった友喜は言った。
「よし。第一号店の完成だ。」
「第一号店??」
「そうだ。将来もう一件建てる予定があるからな。こっちは第一号店だ。」
「えー。もっと可愛い名前にしようよ。」
「いいんだ。名前で客が来ても、仕方がないからな。」
「そうだけど……。」
千夏はしぶしぶ了解した。
絵は売れることなく、時間だけが過ぎて行った。
そろそろ店を閉めようと、友喜が思った時、客が来た。
その客は、サラリーマン風な男だった。
友喜は、そのサラリーマンをどこかで見た事がある気がしていた。
一時、そのサラリーマンと会話をした。
そして、そのサラリーマンは、
「これ一枚もらおうかな?」
と、言って友喜の絵を手に言った。
とても、絵を分かっているサラリーマンだった。
一目で、友喜と千夏の絵を見分け、水彩画の特徴や、自分の特徴などを言い当ててきた。
不思議に思ったが、”とても絵が好きな人なんだろう。”と、友喜は自分の中で解決した。
300円だった絵は、1000円という高額な値段に化けた。
それは、そのサラリーマンが1000円を出し、『おつりはいらない』と、言ってくれたからだった。
その1000円で、その日の夕食を食べて、家へと帰った。
家に着いたあと、そのサラリーマンの事が少し気になり、少し心当たりを探してみることにした。
探し当てるのには、時間はそうかからなかった。
堂々と載っていたのである。
『福岡美術大学』のパンフレットに。
「そうか。あいつは、大学の先生だったのか……。」
友喜は少し考えた。考えた結果、
「自分をアピールしとけば良かった!!!!」
と、少し後悔をした。
そして、”この事は、千夏に黙っておこう。大学の先生に売れたなんて言うの恥ずかしいしな。”と、思った。




