4 財布
それから1ヶ月過ぎた。友喜はずっと思っていた。
”あの日……大失敗のファーストコンタクトの日から、完璧に無視されてるな。”
そう。あの日から、ずっと友喜は千夏から敬遠されている感じだった。
”久しぶりの、一目惚れも儚く散ったな。”
そう思っていた。その事は、みのるにも告げていた。
みのるは、『あはは。残念だったな。また機会があるよ。』と、笑いながら慰めた。
いつも友喜は、学校が終わればすぐさま教室を後にした。
千夏も教室を出ていた。
なので、自転車置き場で友喜が自転車の鍵を空けている途中に、千夏が歩いて抜いて行く。
そしてその千夏を、友喜は自転車で抜いて行く。
それが友喜にとって、唯一一番千夏に近づける時だった。
友喜は、いつもの様に川原で絵を描いていた。
するといきなり、後ろの方から声が聞こえた。
「あの。藤代くん。」
「ん?」
誰かと想い、後ろを振り向いた。
そこに立っていたのは、千夏だった。
「ちょ!うお!!何してんだよ!!」
”絵を!!絵を隠さなきゃ!!”
「いや。あの。財布。落ちてましたよ。」
”え??どこで落としたんだろ。ってか、中身見られてたら終わりだ。”
「無くしたって言ってたやつじゃない?学生証が入ってたよ。」
”無くしてた??あら??気付いてないのか??”
「あ……ありがとな。」
と、受け取りながら言った。
その後千夏と絵の話になり、それが美術部の時の先生に知れたら困るので、誰にも言わないでくれと口止めした。
そして、千夏は去って行った。
急な展開に、友喜は驚いた。
”普通に……話したぞ。”
”でも、もうこれ以上何もなさそうだがな。”
そう思っていた。
数日後、いつもの様にみのるの家へ向かおうと家を出た。
その時、千夏の家の方から物音がした。
音のした方へ目をやると、そこにいたのは千夏だった。
”学校へ行くには早すぎるだろ。何してんだ??”
と、思った時千夏と目があってしまった。
”話……掛けた方がいいよな。家が隣だったのは知らない設定にしよう。”
「まさか隣だったとはな。」
「そうだね。びっくりしたよ。」
「今日は早く学校に行く日か?」
「そんな日はないでしょ。いつもより早く起きれたから、その分早くいくだけ。」
「そうか。じゃあな。」
「じゃあなって。どこ行くのよ。藤代くんもたまたま早起きできたなら、遅刻せずに学校来ればいいじゃない。」
「俺は遅刻しないと、一日が始まらないんだよ。」
”実の家に行かなきゃならないんだよ。”
「なにそれ。」
「気にするな。じゃあな。」
千夏と別れた後、友喜は一人幸せな気分に浸っていた。
”今日は良い事があるぞ!!”
と、浮かれ気分でみのるの家へと向かった。
友喜はみのるの家へ着いて、その事を報告し始めた。
「おい実!!今日朝から千夏に会ったぞ!!」
「おはよう。そうなんだ。良かったじゃない。」
「おうおう。今日は絶対良い事あるよ。」
「かもな。」
「それよりさ……。」
そう言って、ドアの隙間からみのるが何かを出してきた。
それは、何かが書かれた紙だった。
内容を見てみると、そこには『最近、何か変わったことなかったか??』
と、書かれていた。
「最近変わったこと??」
と言うと、みのるは慌てた様子で言った。
「ば……馬鹿!!」
「え??何??」
「いや、何でもない。忘れてくれ。」
「お……おう。」
そんな感じで、その日はみのるの家を後にした。
その次の日にみのるの家に行っても、昨日の手紙のような事は無く、いつものみのるだった。




