最終話 伝えたい想い
ある日、友喜は父から呼び出された。
「お前、進路はどうするんだ??」
と、父は言ってきた。
「福岡の美術大学へ行く。」
「お前まだそんなつまらない事を言っていたのか?!」
「……つまらない事だと??」
「そうだ。絵を描いて生活できると思ってるのか?!」
「……。」
「本当。お前はつまらない所だけ、母親に似てしまったな。」
「母さんを悪いように言うな!!!!」
思わず怒鳴ってしまった。
「お前は、誰に向かってそんな口を聞いているんだ!!」
「お前だよ!!だいたい、お前がそんなんだから、母さんが出て言ったんだろ!!」
「……お前だと??貴様、親をなめてるのか?!」
父は、友喜を思いっきり殴った。
その勢いで、友喜は壁にぶつかり倒れこんだ。
口が少し切れて、血が出て来た。
それを手でぬぐいながら、
「いって……。そうやって、母さんも出て言ったんだろ。いや……。お前が追い出したんだ。」
「分かったような事を言うな!!」
友喜は、立ち上がりながら言った。
「じゃあ何で!!何で母さんが出て行ったんだよ!!」
「……。」
「お前は、いつも自分の話が通らないと大声出して。楽だったろうよ。だけどな、こっちはそれに耐えて来たんだぞ。」
父は何も言わなかった。
「俺はもう決めたんだ。お前がそれでも拒むなら、俺はお前との縁を切る。」
「……そうか。好きにしろ。」
そう言って、友喜の父は自分の寝室へと向かった。
友喜は、自分の部屋に帰り怒りを沈めていた。
そして、月曜が来た。
その日朝起きると、机の上に手紙と通帳が置いてあった。
友喜は手紙を広げた。
それは父からの手紙だった。
『友喜。
昨日はすまなかった。こんな紙切れでしか、友喜と対等に話せない私を許してくれ。
……もはや対等ですらないかもしれんな。
昨日は、怒鳴ったりしてすまなかった。
私がああ言ったのには、訳があったんだ。
私は昔、絵を売って生活していたんだ。』
その文を読んで驚いた。
”あの親父が絵を?!”
友喜は、読むのを続けた。
『しかし、生活はかなり厳しいものだった。
現実を見せられたよ。
お前も知ってる様に、母さんも絵を描いていた。
それは、私が教えたんだ。
私が、絵を売るのを辞めたのはお前が小学生に上がる前だ。
その時からだろうか。
母さんとの関係が悪くなったのは。
私が、毎日のように夢を奪われたような顔をしていたみたいなんだ。
会話もろくにせずに、時間だけが過ぎて行っていたよ。
それで、その事に愛想をつかせて母さんは出て行ったんだ。
母さんはもちろん、友喜を引き取ると言ったよ。
しかし、それだけは辞めてくれと私も必死に頼んだ。
結局裁判になったんだ。
その時、私も職があって、安定もしていたから、親権は私が獲た。
だから、今もお前がここにいる。
昨日、あの後母さんに連絡したよ。
今日、家に来るそうだ。
その時、友喜の口から言いなさい。
福岡の美術大学に行きたいと。
私はもう、反対はしない。
昨日本当は、友喜の意思を確かめたかっただけなんだ。
許してくれ。
通帳を一緒に置いておくよ。大学の費用にしなさい。』
父からの手紙を読み終えた友喜は、通帳を開いた。
そこには、見た事も無い額が書いてあった。
友喜は、無意識に涙を流していた。
”親父……。ごめん。ありがとう。”
そう思った。そして、今晩にでも父に謝ろうと思った。
そして、友喜はみのるの家へと向かい、いつもの様に話をして、学校へ向かった。
学校でちょうど、進路の話になった。
そして友喜は、その進路の紙を見ながら思っていた。
”福岡か……。千夏とは離れ離れになるな……。”
”あいつは許してくれるだろうか。”
そしてその日の放課後、いつもの様に川原で絵を描いていた。
「友喜、進路どうするの?」
千夏が聞いてきた。
「……。」
”素直に伝えないと……。”
「何か今日、じっと進路表見ながら考え事してたね。」
「……。」
「どうしたの?」
千夏が不安そうに、見つめてきた。
”いつかは伝えなきゃいけないんだ。言おう。”
「俺……。」
「ん?」
「福岡の芸術大学を受けようと思ってるんだ。」
「……え?」
千夏は戸惑ったような顔をした。
「ずっと行きたかったんだ。福岡の芸大。」
千夏からの反応はなかった。
友喜は続けた。
”でも…”
「でもお前を残して、一人ではいけない。」
思っていたことが、口から出てきた。
「え。いや。ダメだよ!行きたいんなら行かなきゃ!!」
”でも……、そしたらお前が一人になる……。”
「……。」
「アタシの為に諦めるなんて許さないよ!!」
「……。でも千夏とは、一緒にアパートに住むって約束だし。」
「それは……。でもそんなの、友喜が大学を卒業してからでいい!!」
「……そうか。」
「だから、友喜は行きたい大学へ行って!」
「分かった。ありがとう。」
”本当に……。ありがとう……。”
そして、その後一時一緒に絵を書いて、お互いの家へと帰った。
空は少し暗くなっていた。
家に帰ると、そこには見慣れない女性物の靴があった。
”母さん?!”
そう思った友喜は、急いで居間へと向かった。
居間に入ると、そこには友喜の母がいた。
「母さん!!」
「あら。友くん。元気にしてた??」
「うん!!母さんは??」
「元気だったよ。ちょうど今、お父さんが買い物に行った所よ。」
「すれ違わなかったな。」
「そうなの??今日は、お父さんが腕をふるって、鍋を作ってくれるみたいよ。」
「そっか。久しぶりだね。三人で食べるご飯。」
「そうね。」
友喜は、”あっ。進路。……親父が帰って来てからにしよう。”と思い、進路の話はまだしなかった。
「あ!!俺ちょっとしなきゃいけない事があるんだ!!話は、またご飯食べながらしよう!!」
「いいわよ。じゃあご飯の時にね。」
そして、思いついたように友喜は部屋に帰った。
”手紙を書こう。千夏と、実に。”
”前に、似顔絵描いたっけな??それも一緒に入れておこう。”
そう思い、二人分の手紙を書き始めた。
まず、千夏の方から書き始めた。
”えっと……。もう大学に入学している設定でいいや。”
友喜は、大学に入学している気分で文章を書いた。
『あっ。そうだ。俺の通う大学の名前を教えとく。
福岡美術大学だ。』
”よし。大学の名前も書いたし、後は……”
『それと、あ〜。』
”俺がこっちに帰って来てさ、店持ってさ、暮らしが安定してきたら……
俺と結婚してくれないか??”
と、書こうと思ったが、
”いやあ……。これは口で言おう。”
と思い、
『やっぱこれは、千夏と俺が再会した時に言うよ。
気にするな。』
と書き換えた。
そしてみのるの分の手紙を書き終え、その手紙をみのるに渡しに出かけた。
そして、みのるの家に着いた。
「おい実!!」
「……友喜か??」
「そうだけど??」
「何しに来たんだ!!夜はダメだって言っただろう!!」
「え……。すまない。でも渡したいものがあって。」
「……なんだ。」
「手紙だよ。これを、俺が大学に入学したら千夏に渡してくれ。」
「わかった。」
「もし、千夏が俺と同じ大学に進学したら、その手紙は捨てちゃっていいや。」
「わかった。」
「それと、これは実に。俺が、大学に入ってから読んでくれよ??」
「わかった。用が済んだのなら、急いで帰ってくれ。」
「何を焦ってるんだ??」
「いいから!!帰れ!!」
「……わかったよ。じゃあな。」
「ああ。気を付けて帰ってくれ。怒鳴ってすまなかった。」
「おう。」
そう言って、友喜はみのるの家を後にした。
その帰り道、
”何であいつ、あんなに怒ってたんだろう??”
と、思っていた。
すると、目の前に足を怪我した猫が”ニャーニャー”と声を出しながら、苦しんでいるのが目に入った。
友喜は自転車を降り、その猫を抱きかかえた。
「大丈夫か??お前足怪我してるじゃないか。今、病院に連れて行ってやるからな。」
そう言って立ち上がろうとしたとき、誰かに肩を”ドン”と、押された。
友喜は、”え??”と、思った。
次の瞬間、友喜の体は道路へと出ていた。
後ろから、クラクションが聞こえた。
振り返る間も無いくらいの時、
”ドン!!!!”という、大きな音と共に、友喜の体は宙に浮いていた。
走馬灯のように、流れる時間だった。
その一瞬、ライトにある人物が照らし出された。
”お前は……”
次の瞬間、友喜は地面へと転がり落ちた。
その時には、人影はなくなっていた。
自分が、”トラックにひかれた”と気付くのには時間がかかった。
遠くから、友喜の父の声がした気がした。
確かに父は、そこにいた。
買い物袋をぶら下げて。
買い物の帰りに、物音がして近づくと友喜だった。
走って駆けつけたのだった。
「友喜!!友喜!!」
”……やっぱり親父なのかな??”
「しっかりしろ!!死ぬな!!」
”……死んだりなんてしねえよ……。”
「誰か!!救急車を!!!!」
”救急車??大げさだな……。ちょっと引かれただけじゃねえか。”
「友喜!!!!死なないでくれ!!お願いだから、目を開けてくれ!!」
父は泣きながら、友喜に呼びかけた。
”ごめん……やっぱ……意識が遠くなってきたかも……。”
その後も、父は友喜に呼びかけ続けた。
”そういえば……、まだ謝ってなかったな……。……ごめんよ。おとう……さん……。俺……お父さんのこと大好きだよ……。”
”千夏……。ごめん……。一緒に店出せそうにないや……。……そうだ……よく聞けよ。……俺は……
お前のこと……この……よで……一番……あいし……てるぞ。聞こえ……てるか……??
これが……俺から……千夏に……送る……最後の……メッ……セージ…………だ。”
”みのる……あとは…………たのんだ…………”
そこで、友喜の意識は途切れた。
その後、病院へと搬送されたが、手遅れだった。
人間は死後、二時間まで耳が聞こえるらしい。
その声が、脳に届いているのかはわからない。
しかし、友喜の目からは人知れず、涙が流れていた。
最後まで読んでいただいて、本当にありがとうございました。
先に、前回の如く、誤字、脱字があった場合、申し訳ありませんでした。
普通の、ありふれた携帯小説として書き始めた『あたりまえの日常』を、普通の携帯小説じゃなくしようと思い、この話を書き始めました。
友喜の死に隠された真実は、次の〜実のストーリー〜で、明かしますので、またしばらくお待ちになられてください。
お付き合いいただき、まことにありがとうございました。




