第4話
家に着き、俺は一人願っていた。どうか母さんくらいは俺が男であったことを覚えていますように、と。そして若干重く感じるドアを開けた。
「ただいま」
すると偶然にも目の前に母さんがいた。
「おかえり。今日は春原さんの家へ泊まりに行くんでしょ。早くしないと日が暮れちゃうよ」
俺の願いは砕け散った。俺が女子であることに気にもかけず、まさか泊まることまで知っているとは……。俺はうなだれてしまった。ただ、無理やり約束させられたとはいえ、泊まりにいかないと、確かに困ったときに大変になりそうなので、行くことにした。
とりあえず、自分の部屋に入った。すると、部屋の内装が驚くほど変わっていた。男だった時は、壁紙は白色でアニメのポスターを1枚貼っていたのだが、今はピンク色を基調とした壁紙で、ポスターの代わりにクマのぬいぐるみが1つあった。
「……!」
俺は出る言葉がなくなっていたのだが、1つ何かを思い出し、服が入っている現在は淡いピンク色のタンスを開けた。すると中に入っていたものはすべて女物になっていた。しかし、泊まりにいくには制服からどれかに着替えないといけない。俺はタンスの中を必死に探し、1着だけあったレディースのジーンズと出来るだけ目立たない服に、下着を気にせず着替えた。泊まりにいく用意はなぜかしており、中身を一目見ると、スカートやワンピースは偶然にも入っていなかったため、それを持っていくことにした。
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俺の家から春原の家までは電車から5分くらいのところにあるので、電車で行くことにした。俺は、電車内で考えていた。
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俺は女子になり、女子と泊まることになった。
→つまり、一緒に風呂に入ることになる。(そうとは限らない)
→そして、春原にまた魔法をかけられる。(確率1億分の1)
→よって、俺は女子のまま!(いや1週間っていう約束は?)
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うわっ、それだけはかんべんして! と思っていると春原の家の最寄り駅に付いた。
駅から春原の家までは歩いて3分なので、すぐに着いた。インターホンを押すと、春原春奈の妹だろう人物が玄関から出てきた。容姿は小学生くらいで、純粋な目をしている。……ぎゅっとしたい。
「妹さんかな? お姉ちゃんはどこにいるの?」
「何言ってるの佑珠希ちゃん。わたしは一人っ子だよ」