焼失
五分程度で書いた。後悔も反省もしていない。
僕は人気のない廃ビルの中にいた。くすんだ色の壁は、スプレーでバカバカしい内容の落書きで埋め尽くされていた。周りに人気がないことを再度確認すると、僕は前から用意していた黒い油を頭から勢いよくかぶった。ヌメヌメとした不快感が、身体中を這い回る。
そして、僕は自分自身に火をつけた。先ほど被ったガソリンのせいで身体全体から激しく炎が燃え上がる。身体中を引き裂かれるような痛みと、熱さ。声にならない声をあげて、僕は意識とは逆に地面を転げまわった。その騒ぎをききつけてか、何人かの人がやってきたが、みんな僕のことを遠巻きに眺めるだけだった。
あつい、あつい、あつい。それだけだった。もう死ぬとか、周りへの迷惑とか、そんなこともうどうだってよかった。誰だっていいから助けてほしかった。
僕は死にたかった。誰からも必要とされない自分なんて、いらないと思った。でも、僕は今このとき自分の手で誰かの助けの手を払ってしまったんだ。そう悟った。
身体がだんだん炭になっていく感触とともに、意識は薄れ始めた。