第5話
ブックマークありがとうございます。
作者は学校事務の経験はありませんので、実務の部分はさらっと流します。主に主人公の恋愛に注目して楽しんで頂けると幸いです。
気になる点もあるかと思いますが、ご容赦下さいます様お願いいたします。
「さぁ、服を脱いでこちらを向いて…。」
「は、はい……。」
「フフ、緊張してるんですか?
大丈夫。僕に身を任せて?」
優しくして下さい…。先生の手がそっと私の胸に触れ、、、
いや~ん!じゃなくて、違~う!
「はい、息吸って。吐いて。」
「後ろ向いて下さい。」
「口開けて下さい。」
「上の方みて下さい。」
「はい、良いですよ。服着て下さい。」
健康診断終了~。期待した方ごめんなさい。
「ありがとうございました。」
「特に異常はありませんでしたよ。」
健康には根拠のない自信があるものの、ホッと息をつく。
あの後、なんとか居座ろうとごねる美紅嬢をさらっと追い出した東雲先生は、アホみたいに入口付近で突っ立ってる私にやっと気付いた様で、こちらに顔を向けた。
声が良いと顔も良いのか?でも、声優さん全員が
イケメンって事はないし(失礼!)。逆か、顔が良いと声も良いんだな。その説を証明するためにも、次の休みにでもイケメンなのに声が残念な人探しでもするかな。話がそれた。
つまり、東雲先生はとってもイケメンだったのである。
身長は180cm以上はあるだろう、至近距離では見上げる事になってしまい、首が痛い。
眼鏡に軽くかかる髪の毛は無造作にゆるくカーブを描き、染めてはいないだろう自然な茶色は短過ぎず長過ぎず、とても清潔感がある。
白衣をまとい、姿勢正しく立つその身体にのる顔は眼鏡で隠しきれない大きな瞳に、形の良い鼻、口は薄いながらも冷たい印象は受けない。幼いとまでは言わないがヘタしたらまだ学生でもいけるんじゃないかと言えるぐらいの童顔と言えるかもしれない。
ぽけっと東雲先生の顔に魅入っている間、何故か先生の方も何も言わずにこちらを見ていた。
そんな時間がいつまでも続く訳もなく、先生の言葉で時は動き出した。
「失礼ですが、」
「っ!すみませんっ!
事務員の仙道と申します。健康診断に参りました。今、時間は大丈夫でしょうか?」
慌てて自己紹介と訪問の理由を告げた。
「ああ、もう来てくださったんですか。
僕は保健医の東雲涼正と言います。どうぞよろしくお願いいたします。」
にこやかに答える先生は「わざわざすみません」と言いながら自然と私の背を押すように保健室の奥へとエスコートした(誘導ではないのがポイント)。
ただその時後ろでカチャッっと鍵がかかる音がしたのが気になり、ドアを見ているのが分かったのか先生はクスッと笑うと、
「突然開ける生徒もいますので。只の治療くらいならいいのですが、健康診断中は困るでしょう?」
確かに病院とかで診察されてる時に、さっきの美紅嬢みたいに入ってこられるとちと恥ずかしい。
ふと目の前で準備に動いている後姿を見ながら、お医者さんに診察される様を思い浮かべる………。
「では、始めましょうか。」
くるっとこちらを向いた東雲先生は首まで真っ赤に染め俯いている私を見て、軽く目を見開いた。そして、何で顔を赤らめてるのかが想像できたのか両方の口の端を上げていたのを私は知らない。
ここで冒頭にもどる。
先生の顔を見るのがなんだが恥ずかしくて、ササッと服を整え、「ありがとうございました」もう一度お礼を言いお辞儀した私は足早にドアへと進む。
そういえば鍵かかってたな、と思い出すと同時に背後からヌッと伸びてきた腕にビクゥッ!と肩が上がった。
「この鍵少しクセがあるんですよ。」
「そそそそーなんですかっ!」
耳!耳!
耳元でしゃべらないで~!
焦る私に、先生は更に覆い被さる様に鍵を開けた左腕をそのままドアにつける。
「いつでも来てくださいね、待ってます。」
いや~!!そのウィスパーヴォイスやめろ~!『待ってます』の『す』が『すぅ~』になってんだっ!吐息が耳をくすぐって背中をゾクゾクゾク~って!
「失礼しました!」
逃げる様に部屋を出た私は足早に事務室へ帰って行った。その後ろ姿をじっと見つめられていた事など気付きもせず。
はぁ~、腰抜けるかと思った。
少しずつ糖分をあげていきます。