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第47話(東雲視点)

2話連続投稿の2話目です。

「ねえ、ご飯食べに行かない?」

「悪いがまだ仕事が残っているんだ、先に帰りなさい」

「えー!そんなの放っといて帰りましょうよ~」

「…綾香」

「っ、わかったわよ、じゃあね!」


ふぅ、全くいつまで経っても社会人としての自覚がなくて困ったものだ、よくあれで養護教諭の資格が取れたな。だが蓮二に言わせるとあれは俺が甘やかすからいけないんだそうだ。確かに昔から俺の後ろばかりついてきて、こっちも妹のように可愛がっていたからな。大人になった今でも頼られれば、どうしても無下にはできないんだ。

最近は何年も連絡を寄越さなかったが、この春突然うちの高校に赴任してきたのは驚いた。

昔から綾香は男運が悪いと言うか、見る目がないと言うか、いつも厄介な男と付き合っては俺に泣きついてきたが、今回もやはりと言うか、別れた男に付きまとわれて困ってると言ってきた。しかも、そいつは暴力をふるう男だそうで常に見張られているから俺に恋人のフリをしてくれと頼んできたのだ。

それはできないと一度は断ったが、泣いて頼まれてしまっては子供の頃を思い出されてしまい、渋々了承してしまった。

この頃はその男もあまり見かけないそうだし、いい加減恋人のフリも終わりにしたい。

それというのも、俺には真紀子さんという存在がいるからだ。

彼女とは付き合うどころか気持ちを伝えてもいない。なのに学校中で綾香と付き合ってると噂が立っている今、きっと彼女もそう思っているだろうと思うとやりきれない。

この前ようやく彼女に謝る事ができて彼女も笑って許してくれた所なんだ。彼女にだけは誤解されたくないのに、あれからちゃんと話しも出来てない。


情けない話だが、俺は本当に好きな相手には何も出来なくなるらしい。

いつも綾香が周りにいるからなんて言い訳に過ぎない。メールでも電話でも連絡する手段はいくらでもあるのに、俺ときたらまた断られたらと怖じ気づいて誘うこともできないんだから。

この間は子供じみたヤキモチで彼女を傷つけりして、こんな不器用だったなんてほんと自分でも嫌になるよ。


~♪


ん?誰だ?

自己嫌悪に陥りながらも黙々と仕事を片付けていると、知らないアドレスからメールが送られてきた。


「何だと!?」


送られてきた画像と文面を見て思わず声が出てしまった。

『件名:ただいま合コン中』の下には、見知らぬ男達と乾杯している真紀子さんの画像が添付されていたのだ。

かなりスクロールしていった先にある居酒屋の名前が書かれていたので、やりかけの仕事をそのままに取る物も取り敢えず俺は学校を飛び出した。



間に合って良かった。


現在俺は腹立つことに男に口説かれていた彼女を店から連れ出して、手を握ったまま街中を歩いている所だ。

先ほどから話しかけられているのはわかっているが、正直、今口を開くとまた暴言を吐いてしまいそうで無言を貫いている。


『どうしたらいいかわからなくて…』


ああもう!ほんと目が離せない。あんな下心丸出しの口説き文句に動揺して断れもできないなんて、可愛すぎてほっとけない。だが、あんな顔をあの野郎に見せてただけでも腹立たしいのに、あいつ手まで握りやがって!

思わず抱き締めてしまったが、力が入りすぎて苦しそうな素振りは見せたものの、嫌がってはいないと感じた俺は彼女に気持ちを伝えようとした。……したんだが、結局綾香と元彼との揉め事を目撃してしまい、タイミングを逃してしまった。

綾香を一人で帰した責任は俺にあるのは確かだが、それで大切な人をあんな時間に一人にさせるなんて俺はほんと大馬鹿者だ。後でそれを死ぬほど後悔することになるというのに。


警察官に簡単に説明した後、その辺りを探したが彼女はすでに居らず電話しても出ない事に焦りを覚えたが、綾香もいた事もあり、とりあえず自分のマンションへ帰ってきた。


何度電話してもすぐ留守電になってしまう。

彼女の身が心配で仕方ないが、もしかしたら一人取り残された事を怒っているから電話に出ないのかもしれない。だったらそれで良い。彼女が危険な目に会って電話に出れない事よりずっとましだ。


心配で眠れずに朝を迎えてしまったが、あっさりと彼女からのメールでそれは解消されてしまった。

随分とそっけない文面に安心と同時に落胆もしてしまった。

彼女を放置したくせに勝手な言い草だとは思うが、一晩中心配していた相手に(着信履歴の量で推測できるはずだ)こんな事務的なメールで済ますなんて、と。


そして昼前頃、心細いからと無理矢理泊まった綾香を(もちろん部屋は別だ)そろそろ本人の家に送って行こうとした時、今度はKENさんからメールが送られてきた。


『件名:これがラストチャンスだぞ』


どういう意味だ?


『本文:しっかり捕まえとけ!でなきゃ僕が貰うからな』


意味がわからなかったが、添付されていた画像を見てまたもや声が出てしまった。


「はあ!?」


次の瞬間、俺は何も考えずに部屋を飛び出した。









東雲先生のヘタレっぷりが止まりません。

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