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第40話

「あれ~?お姉さん、今日なんか可愛いー!なになに?デート?」


お昼休みに売店横の自販機の前で紅茶を吟味レモンかストレートしていると、後ろから若い子特有のキャピキャピ声が聞こえてきた。


「美紅ちゃん!元気だった!?」


振り返ると相変わらずのツインテリボンの美紅ちゃんがいたずらを思い付いたような顔で私を見ていた。


「美紅はいつでも元気ですよ~、お姉さんも久しぶりですね!」

「久しぶりじゃないでしょう?この前廊下で会ったのにいきなり方向転換して行っちゃったのは誰?」

「え~?そんな事ありましたっけ?お姉さんちょっと会わない内に老化が進んじゃったんじゃない?」


老化だとう!?廊下と掛けてんのか、コラ!

私はまだ25だ!お肌の曲がり角は過ぎたけど、脳みそはまだ萎縮してないわー!!


「み、く、ちゃん?貴女、チャイムが鳴ってから来たにしてはちょ~っとばかり早くない?サボってたわけじゃ、な、い、わ、よ、ね?」


ツインテを両側から軽く引っ張って指摘すると、


「いや~!ごめんなさい~!調子に乗りました、許して下さ~い!髪が乱れる~!!」


手を離してあげると、美紅ちゃんはどこに仕舞ってあったのか大きな手鏡を取りだして髪を整え始めた。

そして、本人的に納得がいったのか手鏡を下ろすともう一度私の格好を見て、


「やっぱり今日の服チョー可愛い!」


それが本当ならチョー(恥ずかし!)嬉しいけど、そう何度も言われると今度は逆に心配になってくる。


「この服、派手だったかな?一応仕事場にも大丈夫なヤツを選んだつもりなんだけど」

「ぜ~んぜん!いつもが地味過ぎるんですよ。」

「そ、そっか…、」

「やっぱりデート?お姉さん、いつの間に~!」

「ちょ、ちょっと声が大きいっ、」


話してる間にお昼時間ということもあって売店回りはだいぶ人が増えてきて、ただでさえ有名人の美紅ちゃんが大きな声で『デート』なんて話してるものだから、そこにいる人達の注目を浴び始めていた。


美紅ちゃんはパンを買うというので、そろそろ戻ろうかと踵を返すとバシッと手を掴まれて、「一緒に食べていいですか?」と色々と聞く気満々の美紅ちゃんに捕まってしまった。





「なんだ~合コンかあ 、それで気合いが入ってたんだ~」

「別に気合いなんか入ってないし…、」

「いいな~、美紅も合コン行ってみた~い」

「えっ?美紅ちゃん行ったことないの?」


勝手に美紅ちゃんは合コンに行っては男の子を総取りして大ひんしゅくを買ってるイメージだったけど(失礼)そうでもないんだ。


「うん、美紅友達いないし」


ごめん、美紅ちゃん。

本人は気にしてなさそうだけどこの話は止めよう。


「そういえば、この前なんで急に帰っちゃったの?」

「…………」


あー私の馬鹿!何聞いてんだ!

ほらまた黙っちゃったじゃん!


「あ、あの美紅ちゃ「郷田君、いま付き合ってる人いる?」……ん?」


今のはもちろん美紅ちゃんのセリフじゃないよね、ということはいつものアレか。


「別にいないけど」

「私、郷田君のことすっと好きだったんです。私と付き合って下さい!」

「悪いけど、誰とも付き合う気ないから」

「で、でも、好きな子もいないんでしょ?だったら、私と…」

「話聞いてた?誰とも付き合う気ないって言ったよね。それになんで好きでもないのに付き合わなきゃならないんだよ、バカか」


ん?この辛辣な感じ、前も聞いた気がするなぁ。

この男の子モテるんだ、みんなこの冷たい雰囲気が良いのかな?

ドエ〇?


「~~~~っ、お姉さん!」


おっと美紅ちゃんのこと忘れてた。


「美紅ちゃんごめ「今、郷田君って言ってたよね!」…ん?」

「あ?ああ、確かに郷田君って聞こえたね、知り合い?」

「告白されてた……、」


おーい、聞いてるー?


「はっ!もしかして今までも!?」


美紅ちゃん帰ってこーい。


黙りこまれちゃうより全然いいけど、今度は自分の世界に入ってしまった。


「お姉さん!!教えて!彼っていつもここで告白されてるの!?」

「へっ?あ、え、えっと、他の場所では知らないけど私が聞いてた限りではこれで2回目かな?」


多分前聞いた『別に』君だよね、声も似てたし。


「2回目……。そんな、バカな……、」


そんなバカなって失礼な(笑)、確かに私もなんで彼がモテるのかわからないけどね。


「お姉さ~ん…、太一君に彼女ができたらどうしよう……」


太一君?さっきの郷田君って子?

…美紅ちゃん貴女もしかして、


「彼が好きなの?」

「……幼馴染みなんです。ずっと仲良く遊んでたんだけど、小学校3年の時太一君は引っ越しちゃって、それっきりだったんですけど…、高校受験の時に彼がはこの高校を受験するって噂を聞いて、頑張って勉強したんです」

「うん」

「入学式の日再開した私に彼なんて言ったと思います?『あんた誰?』ですよ、とってもショックでした。彼に忘れられててなんでこんなに悲しいんだろうって思ったら、気づいたんです。彼の事がずっと好きだったんだって」

「そっか」

「お別れの日にあの花のヘアピンを貰ったんです」

「だから無くした時、あんなに焦ってたんだね」

「馬鹿みたいですよね、自覚した時にはすでに失恋してたんですよ」

「そんなことっ!「ありますよ!」……」

「誰?って言われたんですよ!もうそれから怖くて話しかけられなくなっちゃって……、」

「だったら、どうして他の男の子達と、その、」


美紅ちゃんは思わせ振りな真似をして男の子達にチヤホヤされて喜んでたり、自分のために揉めている人達を楽しそうに見てたじゃない。

そんなことしてれば、気難しそうな郷田君がその姿を見てどう思うかなんてわかりそうなのに。


「美紅が他の男の子と仲良くしてるのを見れば、太一君も焦って話しかけてくれると思ったんです!」


なんでそーなるの!?

なにそのナナメな発想!


「昔は全然モテなかったから安心してたのに…、」

「美紅ちゃん……、告白はしないの?」

「そんなの、できないですよ!断られるのわかってるのに…」


う~ん、結局告白できなかった私が言うのもなんだけど、好きだっていう気持ちだけでも伝えた方が良いと思う。

でももしそこで冷たい態度をとられたりでもしたら、きっと美紅ちゃんは立ち直れなくなるほどのショックを受けるだろうし。

だからって何も言わないままじゃきっと彼女も先に進めないよね。


キーンコーンカーンコーン


「……失礼します。合コン頑張ってくださいね」


美紅ちゃん……。


「絶対また来てね」


それしか言えなかった私に美紅ちゃんは軽く頷くと帰っていってしまった。


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