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第38話

結局、健康診断は後日になってしまった。


あの後、梨谷先生は「教頭が涼の事、探してたわよ~。うるさいから早く行ったほうがいいんじゃな~い?」と、衝立の向こうに人がいるのはわかっているはずなのに軽~い感じで東雲先生に話しかけているけど、……ここ職場だよね?学校じゃないよね?いや、学校なんだけど、学生じゃないよね?

利香先生の気持ちがちょっとわかったかも。


東雲先生はひとつため息をつくと、

「わかりました、すぐ行きます。ああ、まき……仙道さん、お聞きの通りです。すいませんが健康診断はまた後日という事で。」と声をかけて返事も聞かずにさっさと出ていってしまった。


ついさっきの『ごめんなさい。』って言ってた可愛い先生はなんだったの?ってくらい冷たくないですか?顔くらい見せてから行ったって良いと思うんですけど!


東雲先生の冷たい態度に一瞬で顔の赤みが消えた私は帰ろうかと衝立から出ると、そこにはあの時見た忘れたくても忘れない顔があった。


「ごめんなさいね~、邪魔しちゃったみたいで。」


イラッ。

てっきり東雲先生について行ったと思っていたのに、予想に反して保健室に残っていた梨谷先生はニヤニヤしながら話しかけてきた。


初めてちゃんと見たが、少しタレ目気味で可愛らしいのに目尻の泣きぼくろが色っぽい美人で確かに男好きする顔をしている。身長も高くて、まさに私の中の妄想東雲夫人そのものだった。


「残念だったわね、せっかくのチャンスだったのに。でもあの感じじゃ、どっちみち駄目だったんじゃない~?」


イライラッ。


私があの時のキスシーンを見ていた女だとわかっているのか、嫌味を吐いてくる。東雲先生がなんでもないと言ったってキスしていたのは確かだし、それを盗み見していた私が文句言う筋合いはないのだろうけどその物言いには腹が立つ。


「…失礼します。」

「また来てね~、次は私もいるから今度はちゃんとノックしてね~。」


やっぱりわかってたか。

ノックはしましたけど!あなた達がノックの音に気づかないほど夢中になってただけでしょっ!


思っただけで言わなかった私は気合いを入れて無表情を貫き、保健室を退室した。


『あの人とはなんでもありませんから』


東雲先生はそう言ってたけど、本当に付き合ってないの?キスは何でもないことなの?

態度が急に冷たく感じられたのは梨谷先生がいたから?私と親しく話す様子は見られたくない?


『ちょっと変だったのよね、イチャついてるわりに顔が固かった気がするのよ。あの二人なにかあるわ。』


二人で話している時の顔は見てないけど、響子先生の言うように何かあるんだろうか。


いくら考えても答えはでない。


せっかくこの間の事を謝ってもらえて、お互い誤解が解けたっていうのにまたこれでは一人で悩みループに入ってしまう。そして間違いなくマイナス地点に到達する自信がある。


思いきって直接東雲先生にきいてみようか、さっきも早く行って話を聞けばよかったと反省したところだし。先生に話を聞くまでは何も考えないようにしよう。


そう心に決めると気が楽になった私は単純なんだろうな。





廊下を歩いていると、前の方に大きなリボンをつけた美紅ちゃんの姿が見えた。すると美紅ちゃんも私に気付いたのか手を振ってくれたので、傷つけてしまったかもと気になっていた私としては嬉しくて手を振り返した。


もう少しで普通に声が届くというところで何故か美紅ちゃんは方向転換して階段を昇って行ってしまった。その直前に驚いたような顔をしていたので、後ろを振り返って見てみたが数人の生徒さん達がいるだけで特に変わったところもない。

手を振ってくれてたのだから、私から逃げたとは思いたくないがもしそうなら悲しい。


美紅ちゃんが走り去って行った階段を見上げて私はため息をついた。








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