第31話
本日はわが校の終業式である。つまり明日から春休み……は関係なくて、つまり例の東雲事変から1ヶ月も経っているのだ。
もちろんその間、東雲先生と話す事はおろか目も合わせていない。
ん?前もこんな事があったな、でもあの時は私も恋心に気付いてなかったし、元は自分からデートを断った事が原因だったから、避けられて寂しくはあったが私の中でなんとか折り合いをつけていたのだ。
今回の場合、まず東雲先生と話せない事が本当につらい。
確かに酷い事をたくさん言われたがそれでも好きな気持ちが消えないのだ。あんなセクハラまがいな言葉をかけられて嫌いになれば良かったのに、それでも東雲先生が他の女性と子供の運動会でビデオ撮影の場所取りをしているとこまで想像して、涙が止まらなくなってしまう。
なのにだ、馬鹿な私は東雲先生と遭遇しそうになると逃げてしまうのだ、これが前回との相違点の二つ目である。
だって、またあんな事を言われたらと思うと怖くてしかたない。私が悪ければ頑張って謝るけど、多分私は悪くないと思うし、これで謝りに行ったりしたらあの暴言を認める事になってしまう。
そもそも東雲先生はなんであんな事言ったんだろう。男と二人で飲みに行くことの危険性を教えるにしてもあそこまで言う?早瀬先生もKENさんも知ってる人なのに、その人達と変なことすると思ってるの?それとも世間では普通にある事なのかな。
それに、あり得ないけど私が早瀬先生とそういう関係になったとして、なんで東雲先生はあんなに怒ったの?
…………まさか、まさか、まさか!ヤキモチとか!?
いや、ないな。どちらかと言えば、親友の早瀬先生に手を出しやがって!の方がしっくりくる。
聞いた事はないけどすごくモテるだろうし、私なんかを好きになるはずがない。
やっぱり考えないようにしてたけど、すぐ男と寝るような女だと思ってる、が正解なんだろう。
『違いますっ、そんな女じゃありません!』
①『そうですか!誤解してすみませんでした。』もしくは、②『そうですか、それで?(本当か?)』はたまた、③『そうですか、今ごろ釈明して頂いてご苦労様てです。』
誤解を解くシュミレーションをしてみたけど、①なら良し、②なら頑張って疑いを晴らす、③はもう駄目だ、無関心はどうにもならない。
次の日すぐに早瀬先生に相談しようとしたけど、また早瀬先生と二人でいる所を見られたら更に誤解されると思って、結局早瀬先生からも逃げている私は
相談する人もなく、ひとりでぐるぐるして1ヶ月を過ごしてしまった。
早くに勇気を出して東雲先生の所に行けば①だったかもしれないけど、もうすでに③な気がする。
もう、話す事もできないのかな。
はあ、告白すらできなかったな。
でも、勝手に好きでいるくらい許してほしいな。




