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第27話

あれから美紅嬢は来なくなってしまった。

うっとうしく思ったりもしたけど、いざ来なくなるとそれはそれで寂しい気もする。

そもそも私の言った事で彼女を泣かせてしまったのは間違いなくて気にはなるけど、こちらからはどうする事もできないのがもどかしい。


そんな事を考えながら歩いていたのがいけなかったんだろう。


ガタガタッ!グワシッ!


階段で足を踏み外してしまい危うく落ちそうになったが、なんとか手すりに掴まって難を逃れた。


は~!危なかった!まだ胸がドキドキいってる。

イタタタ、どっか擦りむいたな。


「おいっ!大丈夫か?」

「はい~、大丈夫です。って早瀬先生?」

「何やってんだよ、お前。怪我はしてねえのか?」

「多分擦りむいたぐらいだと思います。」

「歩けるか?」

「はい。」


……私『はい』っ言ったよね。

なんで抱っこされてんの?


「早瀬先生っ!私、自分で歩けますから降ろして下さい!」

「降ろしたらお前逃げるからな。」

「逃げるって、何の事ですか!」

「擦り傷くらいなら大丈夫って思ってるだろ?」

「大丈夫ですよ。」

「駄目だ、保健室行くぞ。ちゃんと処置してもらえ。」


えっ?保健室って……、東雲先生がいる!会いたいっ!!でも、恥ずかしいっ!!


保健室と聞いて一気に赤くなった私を見て、早瀬先生はニヤリと口の端を上げた。





「…………。」

「…………。」


き、気まずい。何か話したいけど東雲先生の雰囲気が怖くて言葉がでない。怒ってる?やっぱり、最近来てくれなくなったのは私が何かやっちゃったんだ!どうしよう、謝りたいけど何に怒ってるのか分からない!早瀬先生は私を置いたらすぐ帰っちゃうし!


「はい、終わりましたよ。」

「あ、ありがとうございました。」

「いえ、気をつけて下さいね。」

「………。」

「………。」


う~ん、久しぶりに顔を見られて嬉しいけど、やっぱりもう帰った方が良いよね。


「それでは失礼しま「仙道さん。」」「はいっ!」


立ち上がろうとしたら、急に名前を呼ばれるものだから速攻で返事して座り直した私を見て先生は目を丸くしていた。


「あっ、いえ、あの、お元気でしたか?」


唐突な質問だけど、さっきまでの恐い雰囲気が無くなっていた事に安堵して答えた。


「はい。先生はお忙しかったんですか?」

「まあそれなりにね、………寂しかったですか?」

「は?さ、さび、寂しかったって…、な、何言ってっ!」

「くくっ、真っ赤ですよ。」

「~~~っ!!」


またジョブチェンジして~!ああ、寂しかったよっ!会いたかったよっ!そんなに肩震わして、分かってるよ、からかってるんでしょっ!!


「意地悪言わないで下さい。」

「そんなつもりではなかったんですけどね。」


睨み付けて文句を言うと、東雲先生は肩をすくめてそっぽをむいてしまった。

何があったか知らないが最初の頃のようなただ甘いだけでもなく、最近の口少ない感じでもない、今の先生と普通に話せているのが楽しくてしかたなかった。



「それにしても階段から落ちるなんて、気をつけて下さいよ。一歩間違えたら大ケガしてたんですからね。」

「はい、すみません…。考え事していて、」

「何か気にかかる事でも?」


気になるって言えば美紅ちゃんの事が気になっているけども、彼女のクラスも知らないし(知ってても行けないが)私に今出来る事はないしな。


「専門の方は別にいらっしゃいますが、私も一応スクールカウンセラーを務めてますし、もし良かったらお話してみませんか?」


美紅ちゃんの名前を出さなきゃ良いかな。「あの、先日ですね、」



「成程、おそらくそのヘアピンをくれた人と何かあったんでしょうね。」

「やっぱりそう思いますよね、私が聞いたりしたから何か嫌な事を思い出したんでしょうか。」

「知らなかったんだから仕方ありませんよ、真紀子さんが気にする事はありません。今は何もしない方が良いと思いますよ。落ち着いたらその子もまた来てくれますって。」

「そうだと良いんですけど。」

「ええ。もう少し待っててあげましょう。」

「はい、そうします。あの、聞いて頂いてありがとうございました。先生流石ですね、少し気が楽になりましたよ。」

「大したことはしてませんよ。しかし、真紀子さんも生徒の事を気にかけたりして優しいんですね。」

「そんな!私が泣かした様なものですし…。」

「そんな事はないと言うのに。頑固な人ですね。」


こんな風に東雲先生と話せる事があるなんて。こんなに幸せ過ぎていいのかな。





帰宅後、名前呼びされていた事に気付き身悶えたのは言うまでもない。

東雲先生はおそらく井上さんに諭されて態度が変わったんだと思います。

井上さんには誰も逆らえません。

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