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第25話

翌日、泣き晴らした目を隠すために眼鏡をかけて、いつもより30分早く出勤した私は誰にも会うことなく事務室までたどり着くことができた。


原因は昨日の宿題だ。

『涼正が他の女と抱き合ってんの想像してみろ』


想像しましたよ。想像し過ぎて、東雲先生とその女性がデートしているのを生徒に目撃されて『ヒューヒュー!式はいつですかー?』なんて冷やかされた先生は『来月です』って電撃発表してみんなを驚かし、結婚式では新郎新婦のラブラブっぷりに当てられた私は飲み過ぎで大惨事を起こし、美人で背が高くて東雲先生と並んでも遜色のない新妻に優しく介抱され早瀬先生にめちゃめちゃ怒られて自己嫌悪に陥り、半年後に東雲先生に赤ちゃんが出来たと噂で聞く、というとこまでいってしまい涙が止まらなくなってしまったのだ。


そのまま寝てしまった私は朝起きると空想と現実がごっちゃになって、また泣いた。



まだ始業時間まで少しあるなと、静かな部屋で一人腫らした目に冷タオルをのせていると、段々落ち着いてきた私はやっと涙の意味を考え始める。


東雲先生が他の女に触るのが嫌なのは、触れるとドキドキはしても嫌悪感を感じないのは、近くに居てくれると幸せに思うのは、、、やっぱりアレなんだよな。



東雲先生に恋をしてるんだ。



わー、恥ずかしい!

恋だって。

好きなんだって。

認めた途端、タオルの下でニヤニヤが止まらなかった。


そっか、好きなんだ。そっかそっか。


何故だか、嬉しくてしかたなかった。






東雲先生が好き。

それに気付いた私は(脳内で)ひたすら床を転がり回った後、ふと我に帰った。さて、これからどうする?

告白する?

無理だ、まともに顔を見れる気がしない。

じゃあ避ける?

ヤダ、近くに居たい。

そもそも東雲先生の気持ちは?

少なくとも一度はデートに誘ってくれたんだから(断ったけど、私のばか)多少の好意はあると思うんだけど、でもあの時とはまるで別人みたいになっちゃったし。

ほぼ毎日ここに来てるって事は、嫌われてはいないよね。むしろ、私の事好きだったりして!


…………ありえない。普通好きな人の前であんな無表情でいれるか?私は無理。


うん?ちょっとまて。ここ居たら東雲先生来ちゃう!

こ、こ、心の準備ができてないっ。どうしよう、たった今好きって気付いた所なのに、早速東雲先生と二人っきり?嬉しいけど挙動不審になる自信しかない!

昨日までどうしてたっけ?

あ~!早瀬先生助けてー!!




その時、ガラッ!


ではなく、ガサガサッ!

窓の外から葉っぱを踏む足音が聞こえた。

一瞬ビクッとなったが、いつもの事(告白か呼び出しかその他)なので放っておく。

今それどころではないのだ。


なのに、その気配は珍しくひとつで中々消えてくれないし、そのうちに何やらブツブツ言ってるしで気になってきた私は意識をそちらに向けた。


「~~~ない。」

「どうし~~~たから~~~!」

「うぅ、ひっく、ないよ~!」


どうやら女の子が何かを探しているらしい。しかも見つからないようで、泣き出してしまった。

もうすぐ授業も始まりそうだし、なにより泣いてる女の子をほっとけなくて声をかけてみた。


「何か探してるの?」

「!!」


このパターン前にもあったな。今回も逃げられちゃうかな?


「誰!?」

良かった、逃げられなかった。


「えっと、事務員の仙道と言います。木々で見えないけど、こっちに事務室があるの。何か落としたの?」

「あっ、はい。大事な物をなくしちゃって。」

「そうなんだ、校内で落としたの?何を落としたか聞いても良い?」

「お花のついたヘアピンです、最後に見たのは朝のHRの時なんで校内にあると思うんですけど、それも冬休み前の事なんで…。」


そんなに前から探してるなんて、よっぽど大切なものなんだな。しかし、ヘアピンかそれは難しいな。


「言いにくいんだけど、それだけ探して無いって事は誰かが持ってるのかも、」

「………はい、……ぐすっ。」


ごめん、泣かないで!

どうしよう力を貸してあげたいけど、どうすることもできない………………………………………………、あーーー!!お花のついたヘアピン?もしかして!!


急いでジャケットの(同じの着てて良かった)ポケットを探ると、、、あった!ハンカチで包んだまま奥底に眠ってたんだ!(ズボラで良かった!)


「あ、あの、失礼しました。」

「待って!!あるよ、そのヘアピン!」

「えっ!?」

「今からそっち行くから待ってて!」


かくして、そのヘアピンは無事持ち主の許へ戻ったのだった。


「えっ?美紅嬢?」

「あれっ?あの時の迷子さん?」



ちなみに、この日は東雲先生は来なかった。仕事が忙しいのか、井上さんに何か言われたのか知らないが助かった。











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