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第24話

冬休みが明けてからも一週間程休み、久しぶりに出勤したら、既に学校内は表面上落ち着きを戻していた。


世間的にも大きなニュースとなり、井上さん(理事長と呼ばないでとお願いされた)をはじめ先生方は警察、マスコミ、保護者への対応で大変だったらしい。



そして事件から二月程経った頃、何故か東雲先生が

事務室に入り浸る様になっていた。


「あの~、保健室を空けてても大丈夫なんですか?」

「問題ありません。」


やっぱり美形だな~、足も長いし、いいな~。


「でも、怪我した子とか来るかもしれませんよ。」

「問題ありません。」


腰の位置なんて私の胸あたりじゃないか?


「この前みたいに、探しに来た早瀬先生に怒られちゃいますよ。」

「問題ありません。」


無表情でも可愛いなんて、変顔したらどうなるのかな?頼んでみる?


「問題あります。私が怒られるんです。」

「……黙らせます。」

「何する気ですか!?後が怖いのでやめて下さい。」


しかし、なんで三十路男の肌かあんなに綺麗なのさ?


「まだ、三十路じゃありません。」


まだ二十代だったのか、それは失礼しました。


「いいえ、お気になさらず。こんな顔ですから年上に見られる事がないので、新鮮です。」


おお、久しぶりの長文だ。折角の美声なんだから、たくさん聞きたいよね。


「つまらないとは思いますが、お望みなら生い立ちからお話ししましょうか?」


ええ!それは、ちょっと。


「そうですか。」



「……おい、お前ら。摩訶不思議な会話繰り広げてんじゃねえよ。」


失礼な、あなたも同じ能力者でしょうが。


「てゆーか、いい加減声出して喋りやがれ!!」



最近の恒例行事となりつつある、怒り心頭の早瀬先生による東雲先生のお迎えやって来た。


「おい、涼正。てめえもいい加減にしろよ、俺だって仕事があんだよ。お前の世話ばっか焼いてらんねえんだからな!!」

「頼んでません。」

「ふざけんなっ!!」

「そっちこそふざけないで下さい。お前だって、ここに入り浸ってたじゃねえか。」

「そりゃ、必要だったからだろ。」

「俺だって必要だ。」


東雲先生、お口が悪くなってますよ。もしや、それが貴方の素ですか。


「だ~~っ!!もうっ!ちっ、…………井上さんに言うぞ。」

「…仕方ありませんね。では、失礼します。」


井上さんの名が出た途端、拍子抜けするぐらいあっさり帰って行った。


「井上さんには逆らえないんですね。」

「そりゃあ、あの人は俺達の大恩人だからな。」

「へえ、そうなんですか。って、早瀬先生は戻らないくていいんですか?」

「ああ、お前とちょっと話がしたくてな。」


ええ~、嫌な予感しかないんですけど。


「うるせえ。おい、あいつ何なんだよ。」

「こっちが聞きたいですよ、あの人何なんですか。」


お互い同じ疑問を相手にぶつけるという不毛なやり取りをした後、我々は再び最近の彼について話し合う事にした。


「あいつが何考えてるのかは大体分かるが、どうしてあーなっちまうのかがわかんねえ。」

「それは、ここに入り浸っているくせに無表情で座ったまま自分からは話しもせずに迎えが来るまで居座っている人の事ですよね。私は考えてる事すら分かりません。」

「そんな感じなのか…、はぁ。じゃあお前は?」

「私?」

「涼正の事どう思ってんだ。」

「うっ、直球ですね。」

「お前に変化球投げても打てねえだろ。この際、涼正の気持ちは置いといて、お前の気持ちを知りたいんだ。」

「……。」

「で、どうなんだよ。」


この頃の東雲先生の奇行の意味は分からないが、ある意味そのお陰で緊張しないで済んでいるのも確かだ。一時は目も合わせてくれなかった事を考えると、同じ空間に居る事を幸せに思う。………幸せ?東雲先生と居ると私は幸せを感じてる?それって、いや、でも、


「色々考えすぎなんじゃねえか?」


ぐるぐる考えていると、ズバリ指摘されてしまった。


「元彼の事があったから、自分の気持ちも相手からの好意も見ないようにしてきたんだろ?でも、そろそろ素直になっても良いんじゃないか。」

「素直に……。」

「おう、余計なもんは全部取っ払ってやつの事だけ考えてみてみろよ。」

「先生の事だけって……、でも、やっぱり私、」

「よし、わかった!一回、涼正が他の女と抱き合ってんのを想像してみろ。」


抱き合う?東雲先生が知らない女性と抱き合うの?


「宿題だ、一晩考えてみろ。じゃあな。」


早瀬先生からの宿題で頭が一杯になった私は先生が出て行ったのにも気付かなかった。

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