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第18話


ジングルベ~ル ジングルベ~ル す!ず!がぁなる~。真っ赤なお、は、なぁの~トナカイさ~ん~が~。

はぁ~、なんでクリスマスソングくらいちゃんと歌えないかな、私。


クリスマス当日、アパートに一人で居てもあれこれ考えてしまいどうも落ち着かないので、思いきって外に出掛けてみたはいいものの、行く宛もなく街中をブラブラしているだけで、やっぱりあれこれ考えてしまう。


あの時断らなければ良かったのかな?そうすれば、きっと今頃楽しく過ごしていたのだろうか。今更考えてもどうしようもない事だ、たとえ時間を巻き戻せたとしても同じ事すると思うし。


後悔はしてない、と思いたい。

あれから(当たり前だか)メールも来なくなり、あの日の表情の無くなった顔を最後に、それきり東雲先生の姿は見ていない。

だけど毎日頭から離れない。先生のことばかり考えてしまう。でも、この期に及んでまだ好きだと言い切れない。だからこれで良かったんだと自分に言い聞かせる。これの繰り返し。


東雲先生だって、あんなにあっさりと了承したじゃないか、きっと気に入って遊んでいたオモチャから突然興味を失ったぐらいのものなんだ。

うん、そうだ。これで良かったんだ。あんなカッコいい人と街中なんて歩ける!?ムリムリ。


だから後悔はしない。





「真紀?」

「はい?」


突然後ろから名前を呼ばれて振り向くと、そこには一年前まで恋人だった男がいた。


「真紀、逢いたかった。」


付き合っていた頃よりだいぶ落ち着いた顔つきをしている様だが、私は突然の彼の登場により一年前の出来事がフラッシュバックして一気にパニックに陥ってしまい、彼が申し訳なさげに何かを話そうとしている事に全く気付かなかった。


「いやっ!なんでいるの!?もう会わないって言ったのに!!」

「ごめん。でも俺ちゃんと謝、」

「いやだ!!! 来ないで!!!」

「真紀…。」


この人の目に映っているのも嫌で、急いで逃げようと身を翻したが、「待って!!」男に腕を捕まれてしまった。

どうして、よりによってこんな日に会ってしまうのか、「離して!!」我慢できなくて必死で腕を振る。



「やめなさい!」


突然割って入ってきた人は素早く男の腕を掴み、無理矢理引き剥がした。


「し、白石先生?」

「大丈夫ですか。」

驚く私を背にかばうと、白石先生は男を睨み付けながら私に問う。


「真紀、話を聞いて!」


背中で縮こまって頭を振る私をチラと見ると、白石先生は男に向かい声を発した。


「知り合いかどうかは知らないが、これ以上嫌がってる女性に乱暴するなら警察を呼びますよ。」

「!っ、」


「行きましょう。」

警察と聞いて動きを止めた男から目を離さず、先生は私の肩を抱きながらゆっくりとその場を離れた。





「本当にありがとうございました。」

「何もなくて良かった。困っている様でしたので思わず止めに入りましたが、良かったですか?知り合いだったんじゃ。」

「いえ、知り合いといえばそうですけど、あの、昔の、知り合いでして、その、」

「無理に話さなくても大丈夫ですよ。それよりも、待ち合わせですか?何ならそこまで送りますよ。」

「いえっ!一人でブラついてただけなので大丈夫です。」

「一人?」


肩を抱かれたまま歩き続け、だいぶ離れた所まで来ると、やっと大きく息を吐き出した。

まだ震えが止まらない私を心配したのか、待ち合わせ場所まで送ると言う。生憎、待ち合わせする人もいないからいいと辞退すると、(クリスマスに一人でいるのがそんなに珍しいのか)驚かれてしまった。


「……、今からパーティーがあるんですが、良かったらどうですか?」

「へっ?パ、パーティーですか!?」

「パーティーと言っても畏まったものではないし、この間の食事会みたいなものですよ。」

「で、でも、」

「飛び入り歓迎ですから、是非どうぞ。」


誰かを彷彿とさせる強引さで、再び肩を抱かれると歩き始めてしまった。

この人こんなキャラだったっけ?私が押しに弱すぎなのか?困惑しつつも、先程助けられた事実と白石先生の害の無さそうな顔に負けて自ら歩き出した。



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