表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

惚れ薬はきかない

作者: 花*

放課後の教室、目の前には惚れ薬。さあどうする?

私とクラスメイトの惚れ○○の日々。 ※タグ必読

 

【1.惚れ薬はきかない】


 ここに一粒のキャンディがある。

 これは惚れ薬だ。

「は?」でしょ? 私も「は?」だけど

 これを使って友達が本当に好きな人と両思いになったのだ。

 彼はかつて友達を振ったというのに。


 さあこれをどう使おうか。眺めていると

「オレ喉痛かったんだ。もらい!」

「あっ!」

 あっという間にクラスメイトがぱくり。


「……」

「なに?」

 彼にこれといった変化は見当たらなかった。

 おかしいなあ。



 [使用方法]

 好きな相手に食べさせましょう




【2.惚れキノコ】


 ここに毒キノコならぬ惚れキノコとやらがある。

 ツッコまないで。私もツッコみたいのを我慢してる。


 これも友人が意中の男子に食べさせて両思いになったという。

 入手元は一体どこなの?


 とりあえず焼いてお弁当に入れてきてみた。

 食べる気がしなくて結局残したけど。


「うおっ何その怪しげな色のキノコ」

「あっ」

 またしても例のクラスメイトがパクリ。

「なに?」

「……」

 そしてやはり彼に変化は見当たらなかった。



 [使用方法]

 好きな相手に食べさせましょう




【3.惚れ媚薬】

 

 ここに惚れ媚薬がある。

 ……びやく。

 そもそもびやくって何? 一見ジュースに見えるけど。


 そこへやってきたお約束のクラスメイト。

 出してきた手をはたく。

「今回は絶対あげないよ!」

「えー。変な色してるからどんな味かと思ったのに」

「絶対だめ」

「じゃあ飲んでみせてよ。どんな味か教えて」

「え」


 自分が飲むのなんか絶対パスで結局彼に飲ませてしまった。

「ふつーに甘かった」


 もちろん彼に変化はない。



 [使用方法]

 好きな相手に飲ませましょう




【4.惚れカップ麺】

 

 ここに惚れカップ麺がある。

 まあお湯もないしね。今ここではどうにもできないよね。


 どうせもうすぐ部活あがりのクラスメイトが来るという算段だろう。(誰の?)


「腹減った~。お、カップ麺!」

 ほら来た。

「お湯ないから」

「職員室でお湯をもらうという手は」

「いや無理でしょ」

「じゃあコンビニでお湯もらおう」

「買いもしないで?」

「お前の分だけカップ麺買ってこっそり注ごう」

「これが私の分という認識は」

「ない」


 だろうね。



 [使用方法]

 好きな相手に食べさせましょう。ヤケド注意




【5.惚れカブトムシ】


 ここに……ここに、惚れカブトムシがある。いや、いる。

 これをどうしろと。

 ま、まさか食……げふんげふん。


「え、カブトムシ?」

 お約束のクラスメイト参上。食いつきいいね。さすが男子。

 ていうかカブトムシで喜ぶのは小学生までだと思ってた。

「これ譲ってくれよ。うちにもう1匹いるから戦わせたい」

「いいよ、エサもここに……」


 そういえばと付属のエサを見てみる。


『惚れ昆虫ゼリー』


 ──徹底してる。



 [使用方法]

 好きな相手に飼ってもらいましょう。

 枕元に置いてもらって一緒に寝れば効果倍増!

 (ただしカブトムシは夜行性です)




【6.惚れシャンプー】


 ここに惚れシャンプーとやらがある。

 どうやって使うの?

 そもそも相手にシャンプーさせる機会がいつあると?

 リンスはないの? シャンプーだけで効果あるの?

 ていうかどこから私の手元に流れてくるの?


「お」


 またうまい具合に部活あがりの汗だくのクラスメイトが。

「水道で髪洗ってくる。くれ」

「リンスないよ」

「そんなの使わん」


 もう勝手にしろ。

 クラスメイトの洗い髪からはさわやかな匂いがした。

 少しだけドキッとした。



 [使用方法]

 好きな相手の髪を洗いましょう

「かゆいところはありませんかぁ?」など笑いをさそってみましょう




【7.惚れ歯磨き粉】


 ここに惚れ歯磨き粉がある。歯ブラシは別売りらしい。

“ぶどう味”

 子供か!


 さてそろそろお約束のようにクラスメイトが来るはずだ。


「これから直行で歯医者なんだよなー。おっ歯磨き粉! しかもオレの好きなぶどう味!」

 子供か!


 そしてその場でしゃかしゃか磨きだしたので驚く。

 でもさあ……なんで鼻の頭に歯磨き粉つくの?

「ついてる」

 人差し指で取ってあげたら彼の顔がなぜか赤くなった。

 私もその指をしばらく眺めて、困った。



 [使用方法]

 好きな相手の歯を磨きましょう

 ぶどう味・いちご味・メロン味があります




【8.惚れ鉛筆】


 ここに惚れ鉛筆とやらがある。

 もう使い方すらわからん。

 体内に取り込まずどうやって惚れるというのだ。

 (シャンプーはまだ頭皮に擦り込むといえる)


 今日クラスメイトと私は日直だ。

「今日筆箱忘れちってさ。シャーペン貸して。あ、これでいいや」

 例の鉛筆を手に取る。

 日直の名前欄に彼は自分と私の名前を書いて、そこに


 傘を書いた。


「……結構ベタなことするね」


 これはどういう効果があるんだろう。

 とりあえず、私の顔は、赤い。




 [使用方法]

 好きな相手の名前を書きましょう。その横に自分の名前を書きましょう




【9.惚れヘアゴム】


 ここに惚れヘアゴムとやらがある。

 大きい、まあるいのがついた、ヘアゴム。

 えーと、これは普通に髪をくくればいいのかな。


「お前、そんなので頭くくんの」

「頭じゃなくて髪。ちなみにこの場合くくるのはおそらくそっち」

「オレ? いいけど」

 いいのか。

 クラスメイトは別に坊主頭というわけではないからちょっとちんちくりんに結わうことができた。

 面白かったから、スマホで写真を撮った。


 待ち受けなんかには、もちろんしない。



 [使用方法]

 好きな相手の髪を結いましょう

 相手が坊主頭の場合は○×△#*&%




【10.惚れ裁縫セット】


 ここに惚れ裁縫セットがある。

 今週家庭科あったっけ。普通に使っていいのかな。

 でも実は私……


「針と糸ある? 制服のボタン取れちった」

 クラスメイトがやってきた。

 この流れは私がつける感じ?


「でも……あの私、家庭科2なんだよね」

 ボタンつけすらうまくできないのであった。


「あ、オレ得意だから問題ない」

 彼はひょいっと針と糸を取り出すとちょちょいと自分でつけた。


 私のゆるんでた袖口のボタンまで付け直してくれた。



 [使用方法]

 好きな相手のボタンを付けてあげましょう

 取れかかってない場合は一旦むしり取ってから付け直してあげましょう




【11.惚れ食パン】


 ここに惚れ食パンとやらがある。

 ふう、久々に食物系に戻ったぞ。

 なんかお腹も空いたし自分で食べちゃおうかな。


「食パンそのまま食べるのか」

 クラスメイトがやってきた。

「いつもそっちに取られちゃうもん。今日はあげないよ!」

「別にいいよ。てか何もつけないの」

「何もつけるものないし」

「これやるよ」


 クラスメイトがかばんから出したのは


『惚れジャム』と『惚れマーガリン』


 これ、私が食べたらどうなるの。



 [使用方法]

 好きな相手に食べさせましょう。惚れマーガリンなど塗れば尚良いでしょう




【12.惚れキャンディ】


 ここに惚れキャンディがある。

 一巡したのかフツーのアイテムが戻ってきた。ほっとするのは気のせいではないだろう。


 そろそろ現れるはずのクラスメイトがなかなか来ないので様子を見に行く。

 すると、隣のクラスの女子が彼に飴を差し出していた。


 あれは……惚れキャンディだ。



 彼はあれを食べる?

 私からの今までの様々なものは効き目はなかった。

 でも。


 二人から目を逸らし引き返す。


 そして、目の前のキャンディをじっと見つめる。




【13.続・惚れキャンディ】


 目の前には惚れキャンディ。


 どうやらここのところ彼が様々なアイテムを私から取り上げる度に、段々と私の気持ちも彼に取り上げられてたみたい。


「お、飴」

 ようやくクラスメイトが現れる。

 いつものように私の前のキャンディに手を伸ばす。


 が。


「だめ!」


 今更だし効果ないみたいだし、あの子のキャンディ食べたかもしれないけど。

 でも。

 私は万一でも彼の心を操作したくない。


「それ惚れ薬だから!」


 すると彼は笑った。


「知ってる」




【14.惚れ薬はいらない】


「これオレのじーちゃんの雑貨屋の商品だから。今までの全部」

 え!

「中身は普通。飴玉もキノコも」

「媚薬もシャンプーも他のも?」

「そう、全部思い込みアイテム」

「だって友達が」

「大事なのはきっかけとタイミング」


 彼は私の手を握る。

「オレに使ってくれよと思ってたんだけど、他のやつに使われたらやだから結局いつも先に使っちった」


 ずっと前からすきなんだ。



 そんな風に言われたら。



 とりあえず、


 惚れ薬は必要ないみたい。





 end





タグが全てです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「ここに○○がある」 話が進むごとにドキドキしてきちゃいました。 私にも効いてますよ、その惚れ薬!( *^艸^) オチも可愛くて、お話のテンポもとっても良くて、安心の花*さま節! 今回はあ…
[一言] あまいお話でした。 ごちそうさまでした(*゜Д゜*)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ