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 地平線すら見えない真っ白い空間で、私はとても奇麗な女性と向かい合っている。

 同じ女の私でもドキリとしてしまうような美貌だ。


 地に届かんばかりの長髪は、春の木漏れ日を感じさせるような黄金。

 その長さにも関わらず上質なシルクのように滑らかで、傷みの一つすら見当たらない。


 明るいサファイアのような青い瞳の眼差しは私を慈しむように優しく、端整な顔立ちにはまさしく聖母と形容するのが相応わしい微笑みを湛えている。


 そして上品でありながら女性としての魅力を十分に備えたその身体を、ギリシャ神話の女神のような衣装に包んだ彼女は、自らのことを慈愛と救済の神セーブルクと称した。


「つまりその世界の崩壊に、私たちの世界まで巻き込まれちゃうかもしれないんですね」


 そう確認する私に、彼女ははっきりと頷いた。


「その通りです、叶会(かなえ)

 そんな最悪の事態を回避する為にも、あなたの力を貸して欲しい」


 彼女の説明を要約すればこうだ。

 私たちの世界を始め、あらゆる世界では光と闇の勢力が絶えず鬩ぎ合いながら均衡を保っている。

 ただしこの均衡は、鬩ぎ合いがその世界内部で完結している限りは決して崩れない。

 それは世界を縛る絶対法則のはずだった。

 ところがある世界で、この絶対に崩れないはずの均衡が破れ、闇の勢力が一気に増大。

 放置すればその世界だけでなく、近隣の世界までをも含んだ大崩壊を起こす可能性が高い。

 神様達はこの事態を重く見たけれど、神と言う存在の本質的特性として直接世界の内部事象へと関与できない。

 そこで他の世界で死んだ善性を持った人間を無作為に選定し、承諾を得た上で力を分け与え、闇への対抗勢力として送り込むことを考えた。

 そして選ばれたのがこの私、時任(ときとう)叶会(かなえ)と言う訳だ。


「原因は分からないんですか?」


 そう問う私に彼女は答える。


「この異常事態の中心にいるのは、魔族の王、魔王です。

 魔王の出現という事象自体は、過去に幾度もありました。

 しかしそれはあくまでも、あの世界の内部で閉じた現象。

 それが世界崩壊へと繋がるとは考えられず、故に今回も当初は見過ごされていました。

 けれど時が経ち事態が悪化するにつれ、今回の魔王の背後に私たちに通ずる力が見え隠れしはじめたのです」


 そこで彼女は一度話を区切り、その美しい顔に僅かに陰を落とした。

 そして「信じたくは無いのだが」と前置きした上で、話を再開する。


「恐らく元凶は、破壊と殺戮の神デスティア。

 あなたの持つ時間感覚で言えば今から約十年前、彼女は神界から姿を消しました。

 それがちょうど、現魔王の出現した時機に重なるのです」


 なるほど、そのデスティアと言う神様の力が闇の勢力に属する魔族側に齎されたせいで、その世界の中での力のバランスがおかしくなっちゃった訳だ。


 なんでそんなことをしたんだろう。

 肩書きに準じた悪い神様なのかな?


 まあ、理由はどうであれ、私たちの世界の崩壊に繋がるようなことは絶対にとめなくちゃいけない。

 そしてその方法も既にはっきりしている。

 魔王の侵攻を何とかして止めれば良いのだ。


 後はその役目を私が担うかどうか。

 そんなの、答えはとっくに出ている。


 お兄ちゃん、私もう一度頑張ってみるからね。

 だから。

 もし、ちゃんとやれたら。

 それはきっと、私がもう一度死んじゃった後のことになると思うけど。


「分かりました。

 私、世界を救う為に、勇者やります!」


 もう一度私のこと、ぎゅってしてね。

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