足跡二つ
一面の銀世界。
今年もこの季節がやって来た。
「マサミ、大変だけど雪掻きお願いね」
「は~い、わかってます」
父は役員会議で東京へ出張中。
今週は母と二人きりだ。頑張らなくては。
雪掻きを持って、家の前の雪と戦わなくてはならない。
でも、私はこれが嫌いではない。
だって、大切な思い出がいっぱいあるから。
これは、ずっと心の奥底の宝箱にしまってある。
「お母さん、終わったよ~」
「はい、お疲れ様。お昼ご飯の時間よ」
「わぁ、私、お腹ぺこぺこ」
「早く来なさい」
「は~い」
美味しかった。母の料理は何でも美味しい。
雪掻きをしたので、その美味しさも倍増だ。
その時、家の電話が鳴った。
電話には母が飛びつくように出た。
『もしもし、…わかってます。大丈夫よ。お願いしますね』
短い電話での会話が終わる。
「誰からだったの?」
「電話ね。気にしない、気にしない」
「えっ!? 気になるよ~」
「マサミには関係無いことだから心配しないの」
「え~? 気になる~」
「それより、お仕事手伝ってね」
「は~い」
私の仕事。それは母の手伝いでもある。
母は、地元の名産品をインターネットで全国に売っている。
その手伝いをするのが私の仕事。
始めは全く注文の無い日もあった。
でも、今では口コミで大人気だ。
忙しくなる。パソコンと格闘だ。
私が注文を受け、母が仕入れと発送の仕事。
時間の流れは速い。
あっと言う間に陽が落ちてしまった。
「はい、お疲れ様。晩ご飯にしましょう」
「は~い」
ニュースでは、明日の天気予報が流れていた。
今夜から、明日の朝まで積雪があるらしい。
「明日もお願いね」
「えっ!? 何のこと?」
「雪掻き、雪掻き」
「わかってます」
「お風呂が沸いているので、先に入りなさい」
「は~い」
一日が終わる。
天気予報が当たっていた。
銀世界だ。雪掻きをしようと外に出る。
あの姿は? お父さん? もう一人は?
近づいている。
まさか…?
「マサミ、帰ったぞ」
「お帰りなさい。でも、お父さんは会議じゃなかったの?」
「お土産だ」
「ただいま、マサミ」
「コウ君、…だよね?」
「そうだよ。忘れてしまったのかい?」
コウ君は海外出張だったはず?
「ううん、忘れないよ」
「良かった。これからよろしくな」
「お父さん?」
「そういうことだ」
「嬉しい」
「俺もだよ」
「うん」
「よろしくな。約束だったからな。これからずっと一緒だ」
「うん、嬉しい。約束だったね」
「俺もだよ。二回も言わせるのかい?」
「もっとたくさん言って!」
「後でたくさん言うよ」
「うん」
銀世界には父と彼の足跡が。
「幸せにするよ」
「うん、ありがとう」
「良かったな、マサミ」
「お父さん、ありがとう」
止んでいた雪が降り始めていた。
さらさらと。
明日には、また辺り一面の銀世界が広がるだろう。
足跡二つ




