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ショートショート集 お弁当温めますか? ~Happy Stories~  作者: 夢宇希宇


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9/15

足跡二つ

 一面の銀世界。

 今年もこの季節がやって来た。


「マサミ、大変だけど雪掻きお願いね」

「は~い、わかってます」


 父は役員会議で東京へ出張中。

 今週は母と二人きりだ。頑張らなくては。

 雪掻きを持って、家の前の雪と戦わなくてはならない。

 でも、私はこれが嫌いではない。

 だって、大切な思い出がいっぱいあるから。

 これは、ずっと心の奥底の宝箱にしまってある。


「お母さん、終わったよ~」

「はい、お疲れ様。お昼ご飯の時間よ」


「わぁ、私、お腹ぺこぺこ」

「早く来なさい」


「は~い」


 美味しかった。母の料理は何でも美味しい。

 雪掻きをしたので、その美味しさも倍増だ。

 その時、家の電話が鳴った。

 電話には母が飛びつくように出た。


『もしもし、…わかってます。大丈夫よ。お願いしますね』


 短い電話での会話が終わる。


「誰からだったの?」

「電話ね。気にしない、気にしない」


「えっ!? 気になるよ~」

「マサミには関係無いことだから心配しないの」


「え~? 気になる~」

「それより、お仕事手伝ってね」


「は~い」


 私の仕事。それは母の手伝いでもある。

 母は、地元の名産品をインターネットで全国に売っている。

 その手伝いをするのが私の仕事。

 始めは全く注文の無い日もあった。

 でも、今では口コミで大人気だ。

 忙しくなる。パソコンと格闘だ。

 私が注文を受け、母が仕入れと発送の仕事。

 時間の流れは速い。

 あっと言う間に陽が落ちてしまった。


「はい、お疲れ様。晩ご飯にしましょう」

「は~い」


 ニュースでは、明日の天気予報が流れていた。

 今夜から、明日の朝まで積雪があるらしい。


「明日もお願いね」

「えっ!? 何のこと?」


「雪掻き、雪掻き」

「わかってます」


「お風呂が沸いているので、先に入りなさい」

「は~い」


 一日が終わる。

 天気予報が当たっていた。

 銀世界だ。雪掻きをしようと外に出る。

 あの姿は? お父さん? もう一人は?

 近づいている。

 まさか…?


「マサミ、帰ったぞ」

「お帰りなさい。でも、お父さんは会議じゃなかったの?」


「お土産だ」

「ただいま、マサミ」


「コウ君、…だよね?」

「そうだよ。忘れてしまったのかい?」


 コウ君は海外出張だったはず?


「ううん、忘れないよ」

「良かった。これからよろしくな」


「お父さん?」

「そういうことだ」


「嬉しい」

「俺もだよ」


「うん」

「よろしくな。約束だったからな。これからずっと一緒だ」


「うん、嬉しい。約束だったね」

「俺もだよ。二回も言わせるのかい?」


「もっとたくさん言って!」

「後でたくさん言うよ」


「うん」


 銀世界には父と彼の足跡が。


「幸せにするよ」

「うん、ありがとう」


「良かったな、マサミ」

「お父さん、ありがとう」


 止んでいた雪が降り始めていた。

 さらさらと。

 明日には、また辺り一面の銀世界が広がるだろう。



足跡二つ

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