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ショートショート集 お弁当温めますか? ~Happy Stories~  作者: 夢宇希宇


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5/16

始まりは手紙から

 交通事故。

 過去の記憶。

 その時、私は両親と永遠の別れとなった。

 そっかぁ、私は一人っ子に。


「お父さん、お母さん…」


 仏壇の遺影に手を合わせる。


「じゃあ、行って来ます」


 それが始まったのは…いつからだったろう?

 私が両親を亡くしてから。

 それは手紙。

 名前のない差出人不明の手紙。

 始めは怖かった。

 それが変わったのはいつだろう。

 今では私の心の支え。

 月に1回、送られて来る手紙。

 悲しい時。落ち込んでいる時。

 その私を励ましてくれたのは、名前のない手紙だった。


「部長、会議の資料が完成しました」

「ユウカ君、ご苦労さん。君みたいな部下に恵まれるのは私の幸せだ」


「それではこのまま続けてよろしいですか?」

「ああ、君に任せるよ。頼んだぞ」


「はい、ありがとうございます」


 会社勤めになって、3年が経っていた。

 仕事も覚え、今の生活に私は満足している。

 残念なのが手紙。差出人は誰なのだろう。

 会いたい。会ってみたい。私の心の支えの人。


「そうだ。ユウカ君、お見合いの件はどうするかね?」

「…お受けします」


「そうか。助かったよ。先方には伝えておくからな」

「はい。よろしくお願いします」


「今週の日曜日ではどうかね?」


 日曜日。

 それは私の生まれた日。誕生日だ。


「大丈夫です」

「よし、後は私に任せてくれ。大船に乗ったつもりでいたまえ」


「はい」

「実はある…まあ、それは当日のお楽しみとするか」


「え!?」

「気にせずに気楽に頼むよ」


「…はい」


 時の流れは速い。

 ここは落ち着いた料亭。

 そう、お見合いの日だ。

 先に到着したのは、私と部長夫妻。

 心がざわつく。

 どうして、私は今ここにいるのだろう。

 心を落ち着かせようと庭の緑を眺める。


 時間の流れが遅い。

 永遠にこのまま待ち続けるのだろうか。

 そう思っている時に襖が静かに開いた。

 入って来たのは……。


 私は一瞬で心を奪われた。


「ユウカさん、やっと、お会い出来ましたね」

「…………………………」


 言葉が出ない。

 手紙の人だ。

 確証はないが、私にはそれがわかった。


 時間が止まる。


「あの、……お手紙ですけど…」

「お手紙ですか?」


 部長夫妻は何やら知っているようで、お互いに見つめ合って微笑んでいる。


「あなたですよね?」

「はい、僕です。お気づきにならなければ黙っているつもりでした」


「お名前をお聞きしてもよろしいですか?」

「もちろんです。名前のない手紙です。これは冗談で、アツヤと呼んで下さい」


「アツヤさん……」

「はい」


「私も会いたかったです」

「僕もです」


「アツヤさん」

「はい?」


「ありがとうございました」

「いえいえ、あなただったからです」


「よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


「はい」


 嬉しい。

 何て幸せなんだろう。



始まりは手紙から

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