結びのボタン
卒業の日。
憧れの先輩。
これが最後の日。
この想いを伝えたい。
驚いてしまった。だって、先輩が私の方へ走って来たから。
「そ、卒業おめでとうございますっ」
先輩の顔が直視出来ない。胸のドキドキがおさまらない。
私は両手に抱えていた花束を先輩に差し出していた。
「ありがとう、ユミちゃん」
え!? 先輩が私の名前を知っていた?
ドキドキで今にも倒れそう。
「これ、持っていてね」
先輩はそう言うと、走り去ってしまった。
私の手の平には一つのボタンが残る。
第2ボタン。
先輩の制服の第2ボタン。
「ユミ、それどうしたの?」
「私、狙っていたのに」
「何で?」
いつの間にか私の周りには女子生徒が。囲まれてしまった。
同級生。2年生。3年生。
何て答えたらいいのかわからなかった。
「ごめんなさい」
私は手をギュっと握り締めて走り出していた。
憧れの先輩の第2ボタン。
なぜ、私の手にあるのか。
でも、嬉しかった。
この思い出を大切にしよう。
そう想い続け、今日を迎えた。
大学の入学式。
私は自分の目を疑った。
先輩だ。在学生代表。その姿を見つけたからだ。
先輩の声がマイクを通して聞こえる。
胸のドキドキがおさまらない。
入学式が終わる。
大学1年生の春。
「ユミちゃん、入学おめでとう」
私を待っていたのは、先輩だった。
花束が私の手に。信じられなかった。
「あ、あ、ありが…とうございます。私、このボタンをずっと大切に持っていました」
私の手の平には思い出の第2ボタンが。
私に勇気をくれた第2ボタン。これがあったから、受験勉強も頑張れた。
「うん、ありがとう」
「イチノセ先輩…あの…」
「うん」
「私……」
「うん、ユウヤでいいよ」
「は、はい、ユウヤさん」
「うん」
「私…」
「うん、ありがとう」
時が止まったようだ。
何を話したらいいのかわからない。
「これから一緒だね」
「はい」
「君を待っていたよ」
「……………………」
「俺は君のことが」
「はい」
「ユミちゃんが大好きだ」
「はい」
「ユミちゃんは?」
「はい、私もです。ユウヤさんが大好きです。ずっと想っていました。ずっと大好きでした」
言えた。
「俺もだよ」
止まっていた時が動き出した。
「はい」
「一緒だね」
「うん」
結びのボタン




