虹色のアルバム
満面の笑み。
可愛かったな。
子どもの頃の写真はこれ一枚。
「ツカサ…、何で死んじまったんだよ。俺を一人残して…」
子どもの頃は意識していなかった。
友達だったからな。
それが一人の女性と意識したのは…。
中学校の卒業式だった。
「ユウタ、その第2ボタンは私が予約しておくからね」
これが決め手だった。
それまでは女性を意識したことはない。
女性は男性より早く大人になると言われている。
その通りだったな。
二人で一緒に写った写真の俺の制服には第2ボタンが無い。
それは約束通り、隣で写っている、ツカサに渡した。
「先輩、第2ボタン下さい」
「ユウタ君、そのボタン、私にくれない?」
多くの後輩や同級生に声を掛けられた。
でも、約束だったからな。
それはツカサに渡した。
写真のツカサは手をギュっと握り締め笑っている。
高校生活では多くの思い出が出来た。
学園祭に修学旅行。
俺は剣道部。
全国大会まで行ったが勝てなかった。優勝したかった。
悔しくて涙していた俺。
それを励ましてくれたのがツカサ。
「元気出しなよ。日本一じゃないけど、日本二番だよ」
その言葉が嬉しかった。
彼女はテニス部。
俺は残された。
全国大会で優勝したからな、ツカサは。
「おめでとう」
「ありがとう」
輝いて見えたよ、ツカサ。
これはその時の写真。
照れる俺を他所に俺の腕をギュっと掴んで微笑んでいる彼女。
「何でだよ、ツカサ。俺を一人にしないでくれ」
大学は別だったが、同じ県内。
家が隣なので関係無いか。
お隣さん。
俺は卒業後は普通にサラリーマンになった。
その三年後に作家デビューし、新聞社を辞めた。
そして、ツカサと結婚することになる。
自分の仕事がある彼女だったが、結婚後には家庭を優先してくれた。
「ツカサ…、何で死んで…」
「ママ! またパパがアルバムを見て一人お芝居をしてるよ」
「もう、ダメなパパね。めっ、しちゃいなさい」
「パパ、めっ」
「あははは、パパはミユキにめっ、されました~」
「あははは、じゃないわよ。ミユキがマネしたらどうするの」
「いや、その…筆が進まなくてな」
娘のミユキが笑っている。
「ツカサ、太った?」
肩を下ろし、微笑んでいる、彼女。
「何をボケているのよ」
「そうだったな」
「ミユキ、弟がいい」
「そうね。じゃあ、神様にお願いしておくね」
「うん」
新たな生命の誕生。
出産が近い。
これを幸せと言わずに何と言うのか。
「あなた、私は昔も今も幸せよ」
「俺もだよ」
「はい」
「良い本書けそうな気がする」
「頑張ってね」
「おう、サンキュ」
「うふふ」
「元気出たよ」
ミユキがにっこりと。
「パパ、お仕事頑張ってね」
「ミユキは良い子だな。誰に似たのだろう?」
ツカサもにっこりと。
「私たちの子だからよ」
「そうだな」
虹色のアルバム




