月夜の空に会いましょう
楽しい楽しい日曜日。
だって、今日は彼に会えるから。
「バカっ! 約束してたのに!」
喧嘩しちゃった。
どうしようかな。
だって、私は悪くない…と思うけど?
自信が無い? でもね。
「ナオキのバカ!」
あ、独り言だ。
バカなのは私?
もう、何してるのよ。
スマートフォンが鳴る。
「ユウコ、俺だけど、……夜になりそう。ごめん」
「…うん、わかった。さっきはごめんね」
「埋め合わせするよ」
「は~い、待ってます」
「おう、大船に乗ったつもりで任せてくれ」
「もう、…期待しちゃうぞ?」
「あ、…いや、その……」
「あはは、いいのよ。仕事、頑張ってね」
「夜に電話するよ」
「うん」
仲直り出来た。嬉しい。待ち遠しいな。
夜まで何しよう。
少し外の空気を吸って来よう。
大丈夫だよね?
うん、大丈夫。
まだまだ時間はある。
アパートの階段が雲のように軽い。
ふわふわ。今にも飛べそう。
外の空気が気持ちいいな。雲一つ無い空。どこに行くかな?
いいえ、決めなくてもいい。散歩を兼ねた探検だ。
「あの~、すみません」
「はい?」
振り向いた私の目には一人の女性が映った。
年配の女性。おばあさん。
どうしたのかな?
「○○駅にはどう行ったらいいのでしょうか?」
そうか。
道がわからないんだ。
「私でよろしければご案内しますが?」
「いいえ、とんでもない」
「歩きたい気分なのです。おばあさん、私に付き合っていただけますか?」
「ありがとうね。じゃあ、お言葉に甘えさせていただくわ」
「はい」
どこから来たのかな? 初めて見る人だ。道がわからないから地元じゃない。
それは今はどうでもいい。
景色は移る。
あっと言う間だった。
「着きましたよ」
「ありがとうね。お礼をさせて下さいな、是非」
「いいえ、気にしないで下さい」
「じゃあ、…そこのお店に入りましょう」
「……はい」
勢いに負けて断れなかった。
空が暗くなっている。
時間…どうしよう?
スマートフォンが鳴る。
私じゃなかった。
おばあさんだ。
「はいはい、わかってますよ。…じゃあ、待ってるわね」
スマートフォンが鳴る。
今度は私のだ。
「ナオキ…、あのね…」
「今から行くよ」
「あ、待っ…」
電話、切れちゃった。
どうしよう。
「お待たせ」
「素敵なお嬢さんね、ナオキ」
「俺には勿体無いよ」
「ええっ!?」
「驚かせてごめん。ばあちゃんが是非に会いたいって、聞かないからさ」
「ナオキのおばあさんなの?」
「はじめまして、ユウコさん。ナオキをよろしくね」
店の音楽が変わる。
小さなステージにはスポットライトが。
「俺と踊っていただけませんか?」
差し出された手を取る。
「はい、…でも、もう驚かさないでね」
「わかってます」
「本当に?」
「…う~ん、少し自信が無い」
「もう、…」
「踊ろう」
「うん」
優しいおばあさんだったな。
本当にびっくりしたぞ、ナオキ。
でも、嬉しい。
私、幸せだよ。
ここは月夜のステージだ。
主演は私とナオキ。
本当に幸せ。
ずっとずっと一緒だよ、ナオキ。
月夜の空に会いましょう




