七色の鉛筆
私は覚えているよ。
初めて出会った時を。
高校の入学式だったな。でも、これは私だけの秘密。
だから、忘れないように書いておくんだ。
秘密の日記帳に。
これは誰にも見せられない。
あ、彼だ。
何だか楽しそう。
私も一緒に話したいな。
彼の笑顔が眩しい。
えっ!? 私を見て微笑んでくれた?
気のせい?
でも、嬉しい。
いつか、きっと…。
今日の色は桜色。
書いておこう。
『ナツカワ君が、私を見て微笑んでくれた。嬉しい』
不意に話し掛けられた。
「サトミ、何してるの?」
「あ、ユウちゃん。何でもないよ?」
「あ~や~し~い~ぞ~」
「え? あ? あのね。今日はいい天気だね?」
「え~? 雨降ってるじゃん」
顔がほてって熱い。
真っ赤になってるかな、私の顔。
視線を感じた。
ええっ!? ナツカワ君に見られてる?
どうしよう?
「あのね。あの、ううん。何でもないよ」
「もう、あんたたちは見ていて…楽しいわ。あっはっはっ」
ええっ!? ユウちゃん? 何のことだろう?
日記がバレたのかな?
「午後一の授業は情報技術室だよ。移動だから行くよ」
「う、うん」
始まる授業。
目の前にあるのはパソコンのモニター。
私が高校に入学した時に導入された、情報技術の授業。
でも、私はこれが少し苦手。メールとかなら出来るのだけど。
時間の流れは速い。
あっと言う間に授業は終わってしまった。
今は自分の教室に戻って来たところ。
今日はいいことあったな、うん。
もう一度、秘密の日記帳に書いておこう。
何色がいいかな?
真っ赤な…思い出してしまった。
ナツカワ君に見られたのだった。
また顔が熱くなって来た。
今のうちに書いておこう。
情熱の赤だな。私には似合わないかも?
急ごう。…無い???
私の…。
私の秘密の日記帳が。落した? 忘れたのかな?
どうしよう。
焦っていると、不意に話し掛けられた。
「コヤマ、これ、忘れてたぞ」
ええっ!? ナツカワ君?
「あ、ありがとう」
「ごめん。読んでしまった」
「えええっ!? あ、あのね。これはね……」
「ナツカワじゃなくて、サトシでいいよ」
「ええっ!? 何? 何?」
「名前だよ。俺の名前。知らなかった?」
「う、ううん」
「じゃあ、俺もサトミって、呼んでいい?」
「…うん」
「よかった。一緒に帰ろ」
「う、うん」
「よかった」
「うん。私も」
これって、両想いなのかな?
今日の色は七色の虹。
七色の鉛筆




