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ショートショート集 お弁当温めますか? ~Happy Stories~  作者: 夢宇希宇


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10/16

雨の忘れ物

 忙しい日々。

 仕事に追われる毎日。


「はぁ~」


 ああ、出るのは溜息だけ。

 そう言えば、溜息一つで幸せが一つ逃げて行くんだったな。

 誰に聞いたのかは忘れたが、そんな余裕は今の俺にはない。


「はぁ~」


 …しまった。またも出るのは溜息だけ。

 これで今日は二つの幸せが逃げて行くのか。

 そう思うと悲しくなって来た。

 ふと思い、壁に掛けられた時計を見てみる。

 そうか。

 今日はもう終わっていた。

 時計の針は午前0時25分を指していたからだ。

 会社を設立して二年が経過している。

 今が踏ん張り所。

 社長である俺が頑張らなければ。

 しかし、俺は大きなミス。

 いや、大切なことを忘れていた。

 マコトの誕生日。過ぎてしまったな。渡せなかったプレゼント。

 お祝いの電話もLINEも出来なかった。

 このままでは、俺達の関係は終わってしまう。


 彼女と知り合ったのは一年前。

 会社に中途入社で入った、マコト。面接の時だった。


「まだ会社が若いので、そんなに給料は出せませんが働いてもらえますか?」

「はい、私で良ければお願いします」


 大手商社で働いていた彼女が、なぜ、行き先も危うい俺の会社を選んだのか。

 それは聞けなかった。

 しかし、お陰で会社の経営は軌道に乗った。

 ここまで来れたのは彼女の功績が大きい。

 そうだ。今からでも間に合う。

 電話をしよう。

 俺は内ポケットにあるスマホを取り出した。

 ここで俺はまた自分のミス気づく。

 スマホはマナーモードになっていたからだ。

 着信が1件。

 そして、同じくLINEの通知も1件入っていた。

 相手は…マコトだ。

 留守番電話のメッセージを再生する。


「お疲れ様です。仕事のし過ぎで体調を心配しています」


 聞き慣れたマコトの優しい声。


『会いたい』


 LINEにはそれだけが。俺だって会いたい。

 しかし、今は会社が…仕事が俺を自由にさせてくれない。

 いつの間にか手にしたスマホで、俺は電話を掛けていた。


「はい、マコトです」

「マコトか。俺だよ。ごめん、こんな時間に」


「いいえ、お疲れ様です」

「本当にごめん。怒ってる?」


 誕生日をすっぽかしたのだから、怒って当たり前だ。

 その時である。

 俺の肩が誰かに軽く叩かれる。

 振り向いた俺の胸にマコトが飛び込んで来た。


「会いたかった」

「俺もだよ」


 俺はデスクに大切にしまっていた、マコトへのプレゼントを取り出し、そして渡した。

 マコトは受け取ると、


「ありがとう。開けていい?」

「もちろん、遅くなったけど、誕生日おめでとう」


「うん、嬉しい」

「それ…だけど、受け取ってくれるかい?」


「二年待ちました」


 俺はマコトの言っている意味がわからなかった。

 マコトとの出会いは一年前。

 思い出した。

 そうか。そうだったのか。

 俺とマコトの出会いは二年前。

 会社のあるビルの前で、雨宿りをしていた彼女。

 その彼女に傘を貸したのが俺だった。


「あの…その…婚約指輪だけど…」

「喜んでお受けします」


 マコトが思いを込めて、強く抱きついて来る。

 俺もそれに応えた。

 時が止まればいいと願いながら。


「これからもよろしくな」

「ずっと一緒だよ」


「もちろんだ」

「うん、嬉しい」


 大切にしよう。

 これからの俺達の人生を。



雨の忘れ物

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