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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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メモ魔、復活!そして新たな“土の問題”

ゴアゴア紙の試作成功から数日後。

工房では、鉛筆組と紙組が交互に作業を進め、手の空いた者が少しずつ在庫を積み上げていた。


「ふぅ……今日もいい出来ですね、メイヤ様」


「うん! みんなのおかげだよ!」


ミュネが笑顔で汗を拭う横で、メイヤは胸を張って頷く。

鉛筆は1日に数十本。

ゴアゴア紙は乾燥工程のせいで時間はかかるものの、確実に増えている。



その日の午後。

メイヤは父の執務室へ呼び出しを受けていた。


「鉛筆とゴアゴア紙の試用品だが……領主として正式に使用を許可する」


「ほんと!? お父様ありがとう!」


許可を得た瞬間、メイヤの瞳がキラキラと輝く。


――メモ魔、完全復活である。



「メイヤ様、首にかけているそれは……?」


「これ? 木工師さんが作ってくれたの!」


胸元には、薄い木板を二枚合わせて作った“簡易バインダー”がぶら下がっている。

紙を挟めるように小さな木の留め具までついていて、思わず職人技を感じる出来だ。


(お嬢が持ち運ぶなら、軽くして……丈夫で……売れるかもしれん)


木工師はその場で領主に相談し、新商品の可能性として提出していた。

メイヤが知らぬところで、領内の産業はまたひとつ増えようとしている。



「ミュネ、今日は畑のほうを見にいきたいの!」


「畑、ですか? ええ、もちろんご案内します」


ふたりは領内の散策へと出かけた。


昼下がりの陽光が麦畑を照らし、風に揺れる黄金色の波が広がる。

近くでは豆畑の農夫たちが黙々と作業している。


メイヤは土をしゃがんで掴む。


「……うーん、やっぱり」


「何かお気づきになられましたか?」


「土、痩せてる。作物が疲れてるみたい」


農夫に話を聞くと、毎年作る品目はローテーションしているが、肥料が足りないため連作の影響が抜けきらないという。


「この領地、鶏を育ててるよね?」


「ええ、少しですが……」


「もっと増やせないかな? 鶏が増えたら、肥料も増えるはずだよ!」


ミュネはぱちぱちと瞬きをした。


「……それは、確かに理にかなっていますね。ただし鶏を買うにはお金が……」


「うーん……どうしよう……」


メイヤは首のバインダーを押さえながら歩いた。

肥料大量生産――畑改革の第一歩なのは確か。

だが資金だけは、どうにもならない。


そんな時だった。



「メイヤ様っ! ミュネ殿っ!」


遠くから砂煙を上げて、犬族ハーフの商人――ロウガが駆けてくる。


「ロ、ロウガさん? ど、どうしたの?」


ぜぇぜぇ息を切らしながら、ロウガは朗報を告げた。


「エドラン領との――鉛筆取引が成立しましたっ!!」


「えっ!? 本当に!?」


「はい! そして……向こうの領主様が“ゴアゴア紙もぜひ見たい”と!そのための前金として……金貨二十枚、預かってきました!」


彼は腰の袋から重たい革袋を持ち上げた。

中から金貨がぎっしりと光る。


ミュネが驚きのあまり声を失う。


「こ、こんなに……!」


メイヤは思わず拳を握った。


(これで……鶏、買える!)



その日の夕方。


領主館の会議室で、メイヤは父に頭を下げた。


「お父様! この前金の一部で鶏を増やしたいの!」


「鶏を? 理由は?」


「畑の土が痩せてきてるの。肥料をもっと作るために鶏を増やすべきだと思う!」


領主はガルドと目を合わせた。

執事は頷く。


「……確かに合理的です。少しずつ畜産数を増やせば、畑の収穫量も上がるでしょう」


「鉛筆の取引が始まる以上、この臨時収入を使って領内の基盤を整えるべきですな」


父は深く考え――そして、笑った。


「メイヤ、お前はまた面白いことを言い出すな。よし、任せる。鶏の購入を許可しよう!」


「やった!!」


こうして、メイヤの“土づくり計画”は第一歩を踏み出した。


鉛筆が、紙が、領地を動かし始め……

そして今度は“農地改革”までも。


フェルナード領の未来は、幼い少女の手で静かに、しかし確実に変わり続けていくのだった――。

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