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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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休みを持て余す隊長たちと王都で動き出す影

領都は今日も平和だった。

……平和すぎて、やることがない。


「…………」


「…………」


通りの真ん中で、二人の男がバッタリと出会った。


「……はぁ〜……」


先に大きくため息を吐いたのは、世界商品登録機構・機構隊長だった。


「なんで仕事場でも顔合わせて、休みの日まで会わなきゃいけねぇんだよ……」


「俺だって好き好んで会いたいわけじゃない……」


対する近衛隊長も、腕を組んで不機嫌そうに返す。


「休みってのは、もっとこう……気分良く始まるもんじゃないのか?」


「知らん。俺も初めてだ」


二人の会話は、完全に“休みに慣れていない人間”のそれだった。


■ 休めと言われても困る隊長たち


「……そもそもだな」


機構隊長が歩きながら言う。


「この休み、あのちっこいの――メイヤの発案だろ?」


「そうだな」


「隊長の俺たちが休まないと、部下も休めないから“強制的に休め”って……」


「理屈は正しい」


「正しいがなぁ……」


機構隊長は頭を掻いた。


「休みって、何すりゃいいんだ?」


「……それを俺に聞くな」


近衛隊長も困った顔だ。


「訓練も無し、巡回も無し、書類も無し……」


「剣も持つな、制服も着るな、って言われてな」


「私服が落ち着かん」


二人揃って、深いため息。


「遊技場が出来てればまだマシだったんだが……」


「建設中だな」


「酒場で昼から飲むのも違うし……」


「部下に見られたら示しがつかん」


結局、二人は目的もなく領都をフラフラ歩いていた。


完全に――

休みを持て余す中年上司の図である。


■ 王都・ババア、ニヤつく


一方その頃。

遠く離れた王都では、まったく別の空気が流れていた。


「ほぅ……」


世界商品登録機構・総責任者

アグライア=ホルンベルグ――通称ババア。


彼女は報告書を読みながら、口角をつり上げた。


「度量衡統一に最後まで反対してた連中……」


机の上には、商人たちの名前が並んでいる。


「案の定、売上ガタ落ち」


「で、次は反王室派に接触、か」


ババアは鼻で笑った。


「ばっかねぇ……」


「素直に従ってりゃ、生き残れたものを」


「王室に楯突いて、反王室派とくっつく?それで何とかなると思ったのかしら」


報告に来ていた部下が言う。


「どうやら、完全に合流する動きが見え始めています」


「……あら、いいじゃない」


ババアは椅子に深く腰掛けた。


「それなら、やりやすいわ」


「中途半端が一番面倒なのよ」


■ 嘘の餌を撒くババア


「問題は……」


ババアは指を組んだ。


「うちの中にも、ネズミがいること」


「反王室派と繋がってる連中が、内部に何匹か紛れ込んでる」


部下が息を呑む。


「既に……目星は?」


「ええ、だいたいね」


ババアは楽しそうに笑った。


「だから、こっちから“嘘の情報”を流すわ」


「魅力的で、逃せなくて、でも致命的なやつを」


「……それに食いついたら?」


「一網打尽よ」


冷たい声で、楽しげに。


「ゴキブリとネズミ、まとめて駆除」


「まったく……」


「平和ってのは、掃除が大事なのよ」


■ 再び領都・隊長たち


その頃、領都では。


「……なぁ」


近衛隊長が言った。


「このまま何もしないのも、逆に疲れんな」


「同感だ」


「早く遊技場、出来ねぇかな……」


「まったくだ」


二人は同時に空を見上げた。


「……あのちっこいの、今頃何してると思う?」


「どうせ、仕事だろ」


二人は顔を見合わせ、同時に苦笑した。


「やれやれ……」


平和な領都と、きな臭い王都。

休みを持て余す隊長たちと、動き出す陰謀。


――嵐の前触れは、

いつもこんな、のんびりした一日から始まるのだった。

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