表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/197

世界商品開発機構支店(仮)、開店前から大混乱

「――支店、だと?」


その言葉を聞いた瞬間、領主執務室の空気が固まった。


「はい。世界商品開発機構本部より、正式な出向要請です」


「人員は三十六名。事務官、技術監査官、登録審査官、実験補助員などを含みます」


淡々と説明する機構側の代表。

その横で、書類の束がドサッと机に置かれた。


……厚い。

物理的にも、精神的にも。


「いや、ちょっと待ってください」


私、メイヤは手を挙げた。


「支店って……あの、銀行機能もあるあの機構の、支店ですか?」


「はい」


「登録、審査、試験、仮承認までを領内で完結可能にする予定です」


「……え?」


完結?


「……えええええ!?」


執務室に響く私の声。



◆ 父、静かに頭を抱える


「……つまりだな」


父――領主は、こめかみを押さえながら言った。


「王都へ行かずとも、ここで新商品登録が出来る、ということか?」


「左様です」


「輸送・試験・確認の手間を大幅に省略できます」


「……」


父は黙った。


沈黙が、長い。


「……メイヤ」


「はい」


「お前、何をした?」


「えーっと……紙と鉛筆と木と鉄と休みを……?」


「余計わからん!!」


珍しく父の声が荒れた。



◆ 支店候補地を巡る悲劇


問題は山ほどあった。


まず、どこに建てるのか。


「機構としては、ある程度の敷地と警備、耐火・耐久構造を……」


「待って待って!」


「今、建築ラッシュの真っ最中なんです!」


「承知しております」


「なので“仮支店”でも構いません」


仮支店。


その言葉を聞いて、ガルドがポツリと呟いた。


「……例の、空いている倉庫群は?」


「え、あそこ?」


あれは元々、木材と石材を一時保管していた場所だ。

頑丈ではあるが、事務所向きではない。


「……でも、まあ……屋根あるし」


「壁もあるし」


「机並べれば……いける?」


全員の視線が、私に集まった。


「……仮、ですからね?」


こうして、

世界商品開発機構支店(仮)

という、聞いたこともない施設が爆誕した。



◆ 初日から事故る


支店(仮)初日。


朝から、何かがおかしかった。


「版画教材の追加登録を!」


「え? なんで?」


「え? 今日から?」


機構職員も想定外だった。


「おかしい……まだ告知は最低限のはず……」


全員の視線が、私に集まった。


「……え? 私?」



◆ メイヤ、逃げたい


昼前には、完全にパンクしていた。


・銀行窓口が人で溢れる


「本部に連絡を!」

「人員増強を!」

「いや先に椅子を!」


阿鼻叫喚。


私は、そっと執務室を抜けようとした。


「メイヤ様!」


捕まった。


「はい……?」


「こちらの判断基準ですが……」


「これは“発明者が同一人物”扱いでよろしいので?」


「……さあ?」


「え?」


「私、今日は“何もしない日”の予定だったんですけど……」


「無理です」


即答だった。



◆ ロット、遠くで笑う


その頃、ロットは遠巻きに支店(仮)を眺めていた。


「……ほれ見ぃ」


建物から溢れる人、人、人。


「支店が出来た瞬間に、仕事が倍じゃ」


フォフォフォ、と笑う。


「だが、これで王都は完全に後追いになる」


あの小さな領主様は、世界の流れを、知らぬ間に引き寄せておる。


「……ほんに、目が離せん」



◆ メイヤの一言(本音)


その日の夜。


机に突っ伏しながら、私は呟いた。


「……カフェ作るどころじゃないんだけど」


休むために休みを作り、楽するために仕組みを整えたはずなのに。


「……なんで全部、仕事増えてるの?」


外では、支店(仮)の明かりが夜遅くまで消えなかった。


――こうして、

世界商品開発機構支店(仮)は、初日から伝説を作った。


(なお、正式名称が決まるのは、まだ先の話である)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ