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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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ロット震える。領民第一団、到着す!

荷馬車の改造が始まった。

ロットとタルトは、朝から晩まで工房にこもり、火花と木屑を散らしながら黙々と作業を進めている。


しかしその最中――


ロットはひとり震えていた。


もちろん寒さではない。

作業中に「ゾワッ」と背筋が震える、あの感覚である。


(……ワシら、とんでもないもんを作ってしまったな……)


ロットの脳裏には、馬車の車輪が地面を軽快に走り抜ける光景が浮かぶ。ただ強度が増しただけではない。荷重も増え、スピードも上がり、振動も減り……つまりは――


「荷馬車の常識が変わる」


そういう代物であった。


(強化された荷馬車はこうじゃ……荷物、今までの一・五倍は積める……速度も上がる……耐久性も増す…………軍に投入したらどうなる?)


ロットはイメージする。


前線まで物資を運ぶ隊列。

今までなら何日もかかった道のりを、軽々と駆け抜ける荷馬車。馬の疲労も抑えられるから、輸送回数も増える。

兵站が改善されれば、戦術が変わり、戦略すら変動する。


(……これ、戦争の概念が一つ変わるのでは……?)


木工師の老練な脳が、勝手に結論を導き出す。


(ま、まずい……いや、まずくはないが……これは登録案件じゃ。お嬢が“なんとなく描いただけ”の図面で、戦史に名を刻む発明をしおった……フォ……フォフォ……!)


ロットはうっかり笑い声を漏らし、近くのタルトに心配される。


「ロットさん、大丈夫です?ネジ落としたか?」


「いや、ワシのネジが外れかけとるだけじゃ」


「それまずいですよ!」


タルトは真顔でツッコむが、ロットは余裕綽々。


(お嬢は……天災か?)


そんなことを考えながら、ロットは再び作業に戻った。

鉄と木がかみ合い、一台、また一台と改造が進んでいく。


―――


そのころ。


領地の南門。

大きな集団がやってきていた。


ババア――もとい、メイヤお抱えの最強情報屋のお婆さんが紹介した「領民の第一団」である。


「着いた!!」


大声を上げる移住希望者(※語弊なし)。

後ろには――


木工士、鍛治士、建築士、土木士


領地のインフラを支える“基礎の基礎”がズラリと揃っていた。


領主はその場に立っていて、彼らの顔ぶれを一人ずつ眺めていった。


「……こ、これは……」


その表情は驚愕を通り越し、もはや感服である。


(なんと……技術職の中でも最上位の者ばかりではないか……これ程の人材が王都にはねむっていたのか?)


領主は深々と頭を下げた。


「本当に……助かる。よくぞ集めてくれたな。最高責任者!」


領主は胸が詰まりそうになる。嬉しさと、恐怖に似た感動と。


(最高責任者はどこまで先を見ている?私が思っている以上に……遥かに遠く……)


感傷に浸る間もなく、ガルドが横に控えた。


「領主様。受け入れ態勢、整っております」


「うむ!ガルド、今すぐ案内してさしあげよ。まずは仮家、次に職場の配置だ」


「はっ!」


ガルドは手際よく先頭に立ち、到着した技術者たちを次々に案内していく。


仮家はアパート型の建物がすでに数棟仕上がり、すぐに入居可能だ。その後は作業場。木工工房、鍛治工房、建築土木の詰所など、暫定とはいえすぐ働ける環境が整っている。


職人たちは驚きと喜びでざわざわした。


「うわ、もう住む所できてるんか!」


「働く場も整ってる……すげぇ……」


「この速度、普通じゃねえぞ……」


彼らの声を聞きながら、領主は静かに誇らしく思った。


(……この領地は変わる。いや、すでに変わり始めている。メイヤの導きによって……)


―――


そして再び工房。


ロットは完成した荷馬車を見ながら呟く。


「フォフォ……ワシの人生でも、そう無い瞬間じゃな……革命の瞬間を作ってしもうたわい……」


タルトが汗だくになりながら工具を持ち上げる。


「ロットさん、まだ半分残ってますよ!」


「おうよ、やるか!」


こうして、荷馬車革命と領地基盤づくりは同時進行で加速していく。


その中心にはいつも――

“なんとなく描いただけの図面で世界を動かす娘”メイヤがいる。

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