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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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ゴアゴア紙、誕生! 領主、再び驚愕する

数日後。

領主館の工房には、粗削りな木枠、すり潰された繊維の入った桶、そして乾燥中の茶色い紙のシートが何枚も並んでいた。


「で、できましたぁ……!」


ミュネが汗だくになりながら、乾きたての一枚をそっと両手で掲げる。

厚みはまちまち、表面はざらつき、“ゴアゴア紙”という名がぴったりだ。しかしその正体は――まぎれもなく“紙”だった。


「……本当に、書けるのか?」


木工師の男が半信半疑に問いかける。


「もちろん! 鉛筆でなら、たぶん大丈夫!」


メイヤは胸を張って、試作鉛筆を紙の上に走らせた。

黒い線が、確かに、はっきりと残る。


「「…………!」」


ミュネと木工師は息を呑んだ。

幼い少女が次々と“この世界にないもの”を作り出す光景に、もはや慣れる暇さえない。



「な、なんと……これは紙ではないか!」


領主――メイヤの父は完成品を目にした瞬間、目を見開いた。

手にとって、光に透かし、指でこすり……。


「茶色い……いや、粗い……だが、紙だ!! 我が領内で、こんなものが……」


その驚愕ぶりは、鉛筆の時と同じ。いや、それ以上かもしれない。


「これも、原料次第で質を上げられると思います。ただ……白くするのはもう少し後で」


メイヤが説明すると、父はこめかみを押さえた。


「また商人を呼ぶ必要があるな……よし、すぐに呼べ!」



数時間後。

前回の“鉛筆騒動”を経験した商人ロウガ

が、またも呼び出された。


「り、領主様!? 今度は何が……って、これは……ま、まさか紙……? 本物ですか!?」


ロウガは膝が笑うほど衝撃を受け、紙を手に取って震える。


「粗い。確かに粗いが……紙というだけで価値がある。まさか領内産とは……!」


「原料は?」


「こちらです」


「製法は?」


「こちらも、ミュネと木工師が立ち会っています」


領主の指示で執事ガルドも呼ばれ、原価計算が始まった。



「……ふむ。ざっくり算出すると、原料は安い。加工も難しくない。ただし品質を上げるなら追加工程が必要……」


ガルドが冷静にまとめていく。


「では、方向性は二つですね」


ロウガが指を二本立てて言う。


「ひとつ、高品質で高級紙を目指す道」


「ふたつ、このまま安い原料で大量生産し、低価格で領内外へばら撒く道」


場に重い空気が落ちる。


父は悩み、ロウガもガルドもミュネも木工師も、それぞれに考え込む。

紙は高価すぎて庶民は使えず、学術院ですら節約するほどの貴重品。

この選択は、領地の未来を左右しかねない。


そんな中――


「私は、たくさんの人が使える紙がいいと思います」


メイヤがはっきりと言い切った。


「白くなくてもいい。ゴアゴアしててもいい。誰でも手に入る紙のほうが、きっと広まるし……みんなが文字を覚える機会も増えるから!」


静まり返った室内に、幼い声が響く。


父は一瞬驚いた顔をしたが……すぐに柔らかく微笑み、頷いた。


「――薄利多売の、普及品路線だな」


「はいっ!」


「……決まりだ。メイヤ、またお前にやられたよ。領地の産業がどんどん増えていくな」


父は豪快に笑い、執事ガルドも珍しく口元を緩めた。


こうして、

鉛筆に続く第二の新産業――“ゴアゴア紙”生産計画が本格的に動き出すことになる。

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