働く車と乗用車?そんな感じで!
「鉄製品って何がいいかなぁ〜……」
メイヤが頬をむにむにしながら悩んでいると、鍛治士タルトさんと木工師ロットさんが、なぜかきっちり正座で待っていた。
「お嬢、鉄で何か作るって聞きまして!」
「私も木のフレームに合わせられる物があるかと!」
2人の期待の眼差しに、メイヤは「うぇっ!」と小さく後ずさる。
(いや、そんなガチの眼……プロの本気の眼で迫らないで……!)
しかし、漁村で見つかった砂鉄層のおかげで、鉄の供給量が増える可能性が出てきた。
領地の産業としては超重要。軽くあしらうわけにもいかない。
「えっと……じゃあ、荷馬車の改善はどうかな?」
「ほう?」
「ほぉぉ〜?」
タルトさんとロットさんが同時に前のめり。
肩が当たって「ゴンッ」と音が鳴り、二人とも「痛っ!」と同時に頭を押さえる。
(仲良しか!)
「……あの、荷馬車ってさ、木の車輪そのままだと衝撃すごいし、壊れやすいでしょ?
だからその……鉄の輪っかで補強とか……あとは“バネ”とか……?」
「ばね?」
「バネ?」
「うん。私も詳しくはないけど……なんとなく、こう、しなって衝撃を吸収するやつ!」
と言いながらメイヤは急いで「なんとなく図面」を書いた。
みたいな、完全にイメージの代物。
だが、タルトさんとロットさんは真剣だ。
「……お嬢! これは面白い!」
「この“しなる金属板”……使えるぞ!」
「いけますね!!」
なぜか二人で肩を掴み合いガッツポーズ。
(そんなに?そんなにイイ!?)
その勢いのまま二人は工房へダッシュしていった。
数日後
ゴォォォォォォォ……
工房の外から不気味な音が響く。
「メイヤ様!試作品ができました!」
ロットさんの声にメイヤが行くと、そこには改造された荷馬車が。
・鉄の輪を取り付けた頑丈な車輪
・車体の下には板ばねっぽい物体が「ぐにゃん」と取り付けられている
タルトさんは胸を張る。
「重量に強い“板ばね式”です!」
「衝撃を受けても……ほら!」
ドスッ(タルトさんが荷台車上で跳ねる)
→ 車体がしゅんっとしなる。
「すごっ!!」
ロットさんが別の試作品を出してくる。
「こちらは“弓形式”。しなやかさ重視で、乗り心地が抜群です!」
「揺れはしますが、ガタガタが消えましてねぇ……!」
(乗用車とトラックみたいな差が出てきた……!)
メイヤは感心しながら頷く。
「荷物は板ばね、人が乗るのは弓って感じかな!?」
すると二人は満面の笑み。
「「まさにそれです!」」
―――
そこへ、突然。
「なああああんとぉぉぉ!? 新型の荷馬車だとぉぉ!??」
ロウガ商会の主、ロウガさんが土煙を上げて登場。
「聞いたぞメイヤちゃん!! なんかすんごい荷馬車作ったって!!」
(誰よ情報流したの!!)
ロウガさんは食いつくように試作車にへばりつき、乗り心地を確かめ、車輪を叩き、ばねを伸ばし……
「ほしい!! うちの商隊、全車に搭載したい!!」
メイヤ「え、えーと……すぐには新車は無いですが……」
「なら既存の馬車を全部改造してくれぃ!! いや、むしろ頼む!!」
商隊の馬車は数十台規模。
ロットさんが青ざめる。
「そ、それは……仕事量が……!」
タルトさんは逆に震えて笑った。
「ふ……ふはは……! 商売が……来たああああッ!!」
メイヤは気圧されつつも笑顔で頷いた。
「じゃあロウガさん。順番に改造していきますね!」
「任せたぞメイヤちゃん!! この領地の馬車、全部革命だぁぁ!!」
―――
こうして、
鉄×木の新型サスペンション付き馬車という、「働く車」と「乗用車」に相当する画期的な2種類の馬車が完成した。
領地の人々は知らなかった。
これが後に――
『馬車革命元年』
と呼ばれることを……。




