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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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鉄の匂いと木のヘルメットと、始まる鍛治革命の予感

建築ラッシュ真っ最中の村。

私も毎日のように見回りに行っているのだが――


「メイヤ様、なるべく建築現場の端を歩いてくださいね! 木屑が飛びますから!」


「大丈夫ですよー。見てるだけですし――きゃっ!」


バサァッ!


頭の上に何かが乗せられた。

丸くて、硬くて、ほんのり木の香りがする。


「……え、これ?」


「ヘルメットです。木製ですが。」


ロットさんは誇らしげに胸を張った。


……木製ヘルメット。

でも形が可愛いし、耳当て部分の丸みも絶妙で、どこか“森の国の騎士団”っぽい。


「着用必須でお願いします!」


「はい……」


安全第一。森の騎士、メイヤ。

ただこれ、絶対髪ぺちゃんこになる。


――そんな私の嘆きをよそに、建築の進捗は絶好調だった。


「この棟は今日屋根まで終わる!」


「次の棟は明日には壁が立つぞ!」


職人たちのテンションは最高潮。

“建築は娯楽”と思ってる顔をしてる。


私はスケジュール板に丸をつけながら、ふふん。


「これなら受け入れまで間に合うよね!」


そんな時――

最後の“日雇い+調理経験者”の一団が到着した。


「ようこそー! ごめん、まだ工場はできてないんだけど!」


村の建築ラッシュを見た彼らは目をまん丸にした。


「ここ……なんか活気が凄いですね……!」


「今日もう泊まっていいんです?」


「ご飯はどこで?」


普通の質問が、逆に安心する。


「寮は何棟か空いてます! ご飯は共同食堂で、あっちの列で!」


説明していくうちにやっと工場建築に本腰を入れられる人数になったのを実感して胸が高鳴った。


その瞬間、父からの新しい命令書が届いた。


『担当区画の追加割り当て』


「…………お父様ぁぁぁぁ!!」


仕事が増えた。2割……いや3割増しで。


■漁村から届いた“鉄”の話


そんな中、学術員さんから飛び込んできた一報。


「砂鉄と思われる層を漁村で発見しました!」


「え、鉄? この領地で? 本気で!?」


砂鉄は鉄の材料。しかも“かなりの量”らしい。


「この領地、本当に何でもあるわね……」


木が増え、紙ができ、鉛筆が生まれ、和食まで流行して、そして今度は鉄。


これはもう行くしかない。

私はすぐ鍛冶場へ向かった。


■鍛治士タルトさんと熱気の鍛冶場


バンッ! カンッ!

鉄を打つ音が地面まで響いている。


「タルトさーん!」


「おう、メイヤ様か。どうした?」


タルトさんはガタイのいい優しげな鍛治士。

村の包丁と農具のほとんどを彼が作っている。


「砂鉄が大量に見つかったんです!」


「ほう、それは景気のいい話だな。しかし……」


彼は苦笑して続けた。


「農具に包丁に鍋に修理に……うちは毎日手一杯だ。鉄の棒一本作るのにも、時間はかかる。量産は厳しいぞ?」


うん、わかる。

今の鍛冶は“職人の腕”に依存しすぎている。


鉄はある。

作る人もいる。


でも――


何を大量に作れば一番効果が高いの?


農具?

包丁?

鍋?


今の村にはすでに必要量はある。

増産しても利益にならない。


私は腕を組み、ぐるぐる考えた。


(鉄を使って今後の発展に必須で……住民にも商隊にも役立つもの……)


そして、ふっとひらめいた。


そうだ。

今この領地で一番頻繁に使われて、しかも全員が不満を持っているもの。


「――馬車だ!」


タルトさんが目を瞬かせる。


「ん? 馬車がどうした?」


私は勢いよく説明した。


「荷馬車の乗り心地! ガタガタで、すぐ車軸は緩むし、荷物は揺れるし!私の身体もガタガタ!確か“板ばね”とか“弓型ばね”を使った車輪の緩衝があったはず!」


タルトさんの目が一気に輝いた。


「……おいおい、それはもしや……“衝撃吸収の仕組み”か?」


「そう! 大きくしならせた鉄板を弓のように組んで、車輪の上に固定して――荷台への衝撃を減らすの!!」


「なるほど……理屈はわかる。鉄の性質を活かして“しなり”で衝撃を吸収するのか!」


タルトさんは興奮して金槌を机に置いた。


「メイヤ様、それは……すげぇ発明になるぞ!」


「でしょ!?」


馬車の乗り心地が良くなる。

道が多少悪くても荷物が壊れない。

領地から王都までの輸送効率が跳ね上がる。


商人も喜ぶし、領主である父も確実に喜ぶ。


「鉄量産の第一号商品は“馬車のばね構造”でいきましょう!」


タルトさんは顔をほころばせた。


「任せな。図面を見りゃすぐ試作品作ってやるよ。しっかし……メイヤ様の頭の中はどうなってんだ?」


「木製ヘルメットで守られてますから!」


「関係ねぇだろ……!」


鍛冶場に笑い声が響いた。


鉄の匂いが、今までの領地にはなかった“新時代の風”のように感じられた。

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