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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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挿し木革命と動き出す街づくり

挿し木の大成功から数日。

学術員さんたちは、まるで新しい玩具を手に入れた子どもみたいに、あっちこっちの苗木に群がっていた。


「次はこの木で試してみよう!」

「いや、あっちの方が発根しやすいはずだ!」

「どれでもいいが、根っこが出てから騒げぇ!」と、わけのわからない掛け声が飛び交う。


彼らは森からサンプルを採ってきては、切って、削って、挿して、時には土を混ぜ替えては「この配合は神の域に至った」とか言っている。


……とにかく楽しそうだ。


もちろん、楽しんでいるだけではない。

挿し木技術が確立すれば、木材という資源を守れる。


木は建材、道具、燃料、紙――どれも生活に欠かせない。

それらが“自然の森任せ”ではなく“人工的に再生産できる”ようになるのだから、革命と言ってもいい。


「種から育てると年単位でかかるし、森から若木を掘り出すと根を痛めるし……これは大きいよねぇ」


メイヤは成功した挿し木の列を眺めながら頷いた。


一方、村の中では――


■建築ラッシュ、加速


アパートタイプの建物が、ものすごい勢いで増えていた。


「はい次、梁いくぞー!」「おら、新人! 釘持ってこい!」

「ちょ、休憩……あ、いや完成が見えてきたからもう一息だ!」


活気と木槌の音が村中に響く。


既に数棟が完成していて、日雇い労働者たちが続々と入居を始めていた。

仕事終わりの大工たちは、完成したての建物に寝泊まりして体を休め、

翌朝には“完全回復したモンスター”のように元気になって建築速度をさらに上げていく。


「なんか……人間ってこんなに連続で働けたっけ……?」


メイヤは少し引き気味でつぶやいた。


しかし、このペースなら領主家が予定している“受け入れ計画”にもギリギリ間に合いそうだ。

彼女は胸をなで下ろした。


「アパート群が終われば、次は工場だね……紙、木工、金属……うわぁ、まだまだある……」


書類を見ながら肩を落とすメイヤの後ろで、父である領主が声を上げた。


■領主、口をぽかんと開ける


「おい……メイヤ……これ……なんだ……?」


いつになく真剣な顔。

手にしているのは、世界商品登録機構からの定期報告書――と、その付随書類。


それには太い文字で、こう記されていた。


『入金:〇〇〇〇〇〇金貨』


ゼロが、桁が、目に優しくない。


「……え、うち破産した?」


「逆だ! 破産どころか……これは……」


領主は震える指先で報告書をめくった。


「……メイヤの登録した“鉛筆”“ゴアゴア紙”“改良型農具”その他諸々の特許料が……一括で……」


世界商品登録機構は、特許管理だけでなく銀行業務も行っている。

つまり新商品が売れれば、各メーカーが支払った利用料がまとめて振り込まれる。


「でも、こんな額、どこから……?」


「世界中だ。王都の文官も商会も、さらには外国の商団までもがメイヤの発明品を使い始めている。鉛筆の登録数……四桁だぞ。馬鹿な。そんなに売れておるのか……!」


領主はその場で椅子に座り込んだ。


「メイヤ……これ、領地の税収数十年分に匹敵する……」


「いや、知らないうちにそんな大金もらっても困るんだけど……」


「困らん! むしろ歓迎だ! 工場を建て、街を広げ、道を整える資金が揃ったのだぞ!」


領主は半ば笑いながらメイヤの手を握った。


「お前は天才だ! いや……もはや領地の化け物だ!!」


「褒めてるのかそれ……?」


本人は複雑だったが、領主の喜びようは本物だった。


■噂が王都へ


その頃、離れた王都では、別の意味で騒ぎが起きていた。


「この領地……登録特許からの入金額が異常に多くないか……?」


「どこの侯爵家だ? こんな化け物みたいな金額……」


「少女一人が色々作ったらしいぞ。名前は……えぇと、メイヤとかいう……」


王宮の役人たちがざわつく。


そして女王陛下は微笑んだ。


「面白いわね。あの領地……また何か仕掛けてきそうね」



ふと風が運んできた報告書を手にしたババア――例の切れ者の婆は眉をひそめる。


「ほらね。不穏分子がざわつき始めた。金の流れが変われば、必ず動くやつらがいる……

アンタら、目ぇ離すんじゃないよ。メイヤちゃんの領地が狙われるよ」


世界が少しずつ動き始めていた。


その中心に――メイヤがいることを、本人だけがいまいち理解していなかった。

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