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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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クリクリとモモモにミミカと増える希望

メイヤは机いっぱいに広げた領内地図を、じーっと睨みつけていた。


「……ふむふむ……」


指先でなぞるのは、領地北東部の森沿い。


「うちの領内に、クリクリの木、モモモ、ミミカの木があるのね……」


感心したように、ほう、と息を吐く。


「流石、学術の方々。こんな細かいところまで、ちゃんと調べてるじゃない」


地図の片隅には、きっちりと種類と本数まで記されている。


「……名前からして、もう“あれ”よね」


クリクリ。

モモモ。

ミミカ。


どう考えても、前世の栗とみかん、桃の仲間だ。


「うーん……でも本数が少ないわね……」


クリクリ、ももも、ミミカも数十本は欲しいわね。


「これじゃあ量産はまだまだ先……もう少し、木の本数が欲しいところよね……」


メイヤは、ふと顔を上げる。


「……よし」


ミュネの方を見る。


「ミュネ。学術の方々と一緒に、実物を見に行きましょう」


「は、はい!」



森に入ると、学術員たちは目の色が変わった。


「おお……!これは確かに、記録通りだ……!」


一人が、いかにも研究者らしい仕草で葉を観察する。


「こちらが“クリクリ”……実の形状、殻の硬さ……これは完全に……」


「ええ、“あれ”よね」


メイヤが即答した。


続いて、少し離れた場所。


「そして……こっちが“ももも”に“ミミカ“か!」


枝ぶり、葉の形、まだ小さいが膨らみ始めた蕾。


「うん。やっぱりこれも“あれ”だわ」


学術員たちはざわついた。


「“あれ”……とは?どの“あれ”でしょうか……」


「そのうち分かるわ」


メイヤは、にこやかに誤魔化した。


しかし、次の瞬間。


「……問題はここからよね」


メイヤは腕を組む。


「実がなるまで待って、種から増やすと……

最低でも数年かかる」


「……ですね」


学術員も重く頷く。


「でも――」


メイヤは、ぱっと顔を上げた。


「挿し木で増やせば、種子よりずっと早いわ」


「えっ?」


「枝を使って、直接“増やす”の」


学術員たちが息を呑む。


「うまくいけば……数週間で“根”を出させられる」


「な、何ですと……!」


「そんな手法が……!」


ミュネも目を丸くしていた。


「そ、そんなことが出来るんですか!?」


「出来るわ」


メイヤは自信満々だった。


「問題は……環境なのよね」


彼女は空を見上げた。


(本当は“ビニール”が欲しいところだけど……

そんな便利なもの、この世界には無いし)


そこで――


「代用品なら、あるじゃない」


メイヤは、にやりと笑った。


「ゴアゴア紙よ」


「!!」


「油をたっぷり染み込ませれば、防水・保湿が出来る」


学術員たちの目が輝き始める。


「なるほど……!」

「紙を……!?」


そして、即席実演が始まった。


まず、健康そうな枝を一本選ぶ。


「ここ……皮を、少しだけ剥くわ」


ナイフで、くるりと一周。


「ここから、根を生やさせるの」


「ほう……」


次に、用意されたのは――


「熱湯で殺菌した乾燥ゴケよ」


「殺菌……!」


「雑菌が多いと、全部腐るからね」


ゴケにたっぷり水を含ませ、皮を剥いた部分に巻き付ける。


「ここを――」


さらにその上から。


「ゴアゴア紙を巻いて」


じゅわっと、油が滲む。


「上下を、紐でぎゅっと縛る!」


きゅっ、きゅっと結ぶ。


「これで完成」


学術員たちは、しばし沈黙。


そして――


「お、おおおお……!」


「理屈が、すべて通っている……!」


「湿度・防腐・遮光……完璧です!」


メイヤは胸を張った。


「そうすれば――」


指先で包まれた枝を示す。


「数週間後には、ここから“根”が出るはず」


「……!」


「出たら切り離して、別の場所へ植える。

そうやって増やしていくのよ」


学術員の一人が、興奮気味に言った。


「こ、これは……樹木の“量産化”ではありませんか……!」


「そういうこと」


メイヤは、静かに微笑んだ。


「クリクリも、モモモ、ミミカも……

“特産品”に化けるわよ」


ミュネはごくりと唾を飲み込んだ。


「……また、とんでもない事を……」


「まだ“計画段階”よ」


メイヤは肩をすくめる。


「まずは――ここは学術員さんたちに、観察してもらうわ」


「お任せください!!」


「昼夜交代で記録します!!」


「そこまでは笑!2、3日に1回でいいわ!異変があれば即報告を!!」


やる気に満ちた声が森に響いた。


メイヤは、そっと包んだ枝を見つめる。


「……ここからまた、増えるのよ」


クリクリも。

モモモ。

ミミカ。


そして――この領地の“未来”も、ね


風が、若い枝葉を静かに揺らした。

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