メイヤ、住宅問題に頭を抱える
「……は?」
朝の報告を受けた瞬間、メイヤは思わず素っ頓狂な声を上げていた。
「お父様の指示です。“新たな人員が来る。早急に住居を完成させよ”とのことです」
伝令役のガルド。
「……早急にって……」
メイヤは、遠い目になった。
「300人規模って……家を“はい明日完成!”なんて、無理に決まってるじゃない……!」
■ 規格化しても、現場は現場
確かに、建物は規格化してある。
・柱の太さ
・壁の寸法
・屋根角度
・床板の枚数
すべて揃っている。
だが、それでも――
「人が足りない。資材もギリギリ。そして何より、時間が無い……!」
メイヤは、地図の前で腕を組んで唸った。
「普通に家を建ててたら……間に合わない……絶対に……」
■ そこで出た、現代知識
「……よし」
メイヤは、ぱっと顔を上げた。
「アパート形式でいこう」
一軒家を一棟ずつではなく、“まとめて住める箱”を作る。
「家族用は、四人一部屋。二人用、一人用も分けて……」
頭の中で、構造が組み上がっていく。
「上下二階構造。廊下は共通。壁は最小限。水回りは――」
■ さらに短縮するための決断
「……共同台所、共同トイレ!」
これなら、
・配管が一本で済む
・建築工程が減る
・管理も楽
「仮宿舎としては、これが一番早い……!」
メイヤは、紙に走り書きしていく。
・家族向け棟 × 50
・単身向け棟 × 30
・二階建て
・共同設備付き
「もし不要になっても……あとでリノベーションすればいいだけ」
倉庫にも出来る。
工場にも出来る。
学術棟にも転用出来る。
「仮設にしては、完璧すぎるわね……」
■ 問題は「場所」
次の問題は、建築地だった。
「……さて。どこに建てるか……」
広げられた地図には、
・村
・湿地
・水田
・木工場
・鍛冶場
・訓練場
が、少しずつ埋まり始めている。
「ここはダメ。ここは物流の邪魔。ここは将来の工場予定……」
トントン、と指で消していく。
「……ここね」
村の外縁部、
水田にも工房にも近く、
将来の拡張も可能な空白地帯。
「ここなら、300人来ても耐えられる」
■ さらに一手先へ
「建築物の版画も必要ね……」
地図だけでなく、
・住宅配置図
・棟構造図
・水回り配置図
これらをすべて版画化すれば、大工全員に同じ設計図を一気に配れる。
「木工師さんに頼まなきゃ……」
メイヤは、すでに次の動きを見据えていた。
■ そして、現場はすでに動き始める
その頃――
「え? 300人来る?」
「マジで?」
「宿舎、間に合うのか……?」
現場では、
日雇いの大工たちがざわつき始めていた。
「嬢ちゃん、無茶振り過ぎじゃねぇか……?」
誰もがそう思っていた――
ただ一人、本人だけを除いて。
■ メイヤ、やる気だけは満タン
「よし……!」
メイヤは、ぎゅっと拳を握った。
「仮設住宅でも、“住める”だけじゃダメ」
「“ここに来て良かった”って思える場所にする」
地図と図面を抱えながら、彼女は木工場へと向かっていく。




