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階段から転落して思い出しました!89歳まで生きた私、今度の人生は異世界で半島領の次女です  作者:


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人が来る、波が来る

「おーい!! 領主ーっ!!」


朝の執務室に、勢いだけで突入してくる男が一人。


言わずと知れた商人ロウガである。


「……なんだ、その扉はノックという文化を忘れたのか?」


「そんなもん今はどうでもいい!! 吉報だ!!」


「吉報?」


ロウガは、胸を張って言い放った。


「第二陣の労働者が到着したぞ!!」


「……なに?」


「それだけじゃねぇ!第・三・陣!!料理経験者の労働者を二十名、追加募集かけといた!!」


領主の手から、書類がぽろりと落ちた。


「……料理、経験者……?」


「おう。どう考えても必要になるだろ?」


「……それは……」


「それとだな――」


ロウガは、懐から一枚の紙を取り出し、机に叩きつけた。


「支払いはこれだけだ!!もう全部まとめて話つけてきた!!」


「なっ!!!!」


領主の声が裏返る。


「こ、これは……!」


「遠慮すんな。今やらなきゃ意味がないんだよ」


「新商品を量産しろ!売って、回して、金にしろ!!」


ロウガは、にやりと笑った。


「今は“仕込みの時間”だ」


■ 外では、すでに「人の波」


その頃、屋敷の外では――


「うお……人、多っ……」


メイヤは思わず声を漏らしていた。


続々と入ってくる労働者たち。

肩幅が広く、腕が太く、いかにも“現場”の人間ばかり。


「……第二陣って言ってたけど……」


数だけでも、明らかに一気に増えた。


すでに建設中だった宿舎も、完成に近づいている。


「……宿舎、ほとんど建ってきてるわね」


ミュネが感心した声を出す。


「人手が増えると、進み方が全然違うんですね……」


「ほんとよ……」


メイヤは頷いた。


「これで、近衛も機構の人も寝床は確保できたわ」


実際、これまでは――

近衛も、機構軍も、かなり無理をして仮設寝泊まりしていた。


「……あとは、学術隊の人たちの分か」


メイヤは少し考える。


「でも、ここが終わったら――」


視線の先には、これから予定されている土地。


「各種の食品製造工場ね」


味噌工場。

醤油工場。

乾燥加工場。

発酵室。

米の精米・加工施設。


(……書き出してみると、頭おかしい数ね)


「……また人手不足になりそうだけど……」


ミュネが不安げに言う。


メイヤは、少し考えてから微笑んだ。


「大丈夫よ」


「もう“他人事の領地”じゃなくなってるもの」


「みんなで作って、みんなで回す領地になってきてる」


■ 領主、胃が痛い


執務室に戻ると、領主はまだロウガの請求書を見つめていた。


「……額が……額が……」


「おいおい、そんな顔するな」


ロウガは肩をすくめる。


「人が来たって事は、回るって事だ」


「作る、売る、増える。簡単な話だろ?」


「……それが簡単にできぬから……」


「できるんだよ。今はな」


ロウガは、窓の外――活気づき始めた現場を指差した。


「嬢ちゃんが作った“種”が、もう芽を出してる」


「今、畑を耕さずにどうする?」


領主は、しばらく黙り――


ゆっくりと、頷いた。


「……わかった」


「賭けよう」


「この領地の未来に」


ロウガは、満足そうに笑った。


■ その夜、メイヤは思う


夜。


宿舎の明かりが増え、

食堂の灯りも、いつもより多い。


人の声。

笑い声。

食器の音。


「……本当に、人が増えたなぁ……」


メイヤは、少しだけ不思議な気分で夜空を見上げた。


(和食を作りたかっただけだったのに……)


(いつの間にか……)


「……領地ごと、動かし始めちゃってるわね」


だが、不思議と――怖くはなかった。


「……ま、やるしかないか!」


宿舎も建った。

人も増えた。

設備も揃い始めた。


あとは――

作って、回して、売るだけ。


だが、メイヤはまだ知らない。


この“人の波”が、

やがてもっと大きな波を呼ぶことを――。

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